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2011/01/21

<在日社会>韓日古代交流を探る

  • 韓日古代交流を探る

    「玉虫厨子」を見学する入矢麻衣さん
    ((c)2011 海峡をつなぐ光製作委員会)

 韓日合作歴史ドキュメンタリー映画『海峡をつなぐ光―玉虫と少女と日韓歴史ロマン』(乾弘明監督)の完成披露試写会が18日、都内で行われた。「玉虫」という昆虫の光り輝くはねを使った装飾品が、韓日の古代国家に存在した事実を通して、古代の文化交流に思いをはせた作品で、在日4世の女優、入矢麻衣さん(18)が、案内役を務めている。

 韓国慶州にある新羅時代の古墳・皇南大塚(約1500年前)から出土した新羅の王族が使用していた「玉虫装飾馬具」。それは、光り輝く玉虫のはねで装飾されていた。一方、およそ1300年前、飛鳥時代に推古天皇が拝んでいたとされる国宝の仏具「玉虫厨子(たまむしのずし」にも玉虫のはねが使用されていた。

 玉虫はその美しさが宝石にも称えられ、縁起が良いとされた昆虫だ。寒さに弱いため韓半島では少数しか生息しておらず、日本の地が生息には適していたという。

 両国でそれぞれ復元作業が行われたが、韓国では玉虫が少なかったため、日本の玉虫博士、芦澤七郎さんから寄贈された大和玉虫3000匹を使って、崔光雄さんの高度な復元技術によって完成した。それは大きな反響を呼び、玉虫の天然記念物指定と人工繁殖研究に結びついた。

また日本の「玉虫厨子」は、蒔絵師の立野敏昭さんが見事に復元した。

 映画はその両国の職人と歴史遺跡を、在日4世の女優・入矢麻衣さんが訪ねる形で進行する。新羅の馬具に使われた玉虫のはねは日本から運ばれたのか、逆に装飾技術は渡来人によって日本に伝わったのか、などが語られる。また撮影を通して入矢さんが、在日として成長していく姿を描くことで、韓日友好に向けた未来を映画は指し示す。

 乾監督は、「二人の職人と二つの国に育まれた10代の少女の姿を通して、両国間にあるのは海峡だけだということを示したかった。その海峡をつなぐ役割を次世代の若者が担ってほしい」と語った。入矢さんは、「今後は女優として韓日を結ぶ役割を果たしたい」とあいさつした。

 映画は韓国では今春、MBC系列でテレビ放映され、日本では今夏、劇場公開される予定。