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2011/11/04

<在日社会>劇団青年団主宰・平田オリザ氏、「演劇で日韓交流深化を」

  • 劇団青年団主宰・平田オリザ氏、「演劇で日韓交流深化を」

    ひらた・おりざ 1962年東京生まれ。86年国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。現在、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授、劇団青年団主宰など。

 劇作家で劇団青年団主宰の平田オリザさん(48)は、演劇を通した日韓交流に長年取り組んでいる。日本の植民地支配下に生きるソウルの平凡な日本人一家の生活を通して、植民地支配の本質を描いた「ソウル市民五部作」(平田オリザ作・演出)を東京の吉祥寺シアターで上演中だ(12月4日まで)。日韓の若者が新時代を作ってほしいという平田オリザさんに話を聞いた。

 ――新作2本を加えたソウル市民5部作をロングラン上演するが。

 植民地主義がいかに人間をゆがめるか、そしてそのゆがみが現在まで続いていることを、日本の若者たちに伝えたいと考えた。第1作の「ソウル市民」は89年に初演した。第2作「ソウル市民1919」は、1919年三・一独立運動時の無自覚な日本人をテーマにした。この作品は賛否両論あったが、親交のある韓国人演出家、李潤澤氏が韓国語に訳して韓国で上演してくれたことは、とても意義深くうれしかった。06年に「ソウル市民昭和望郷編」を発表し、今回の新作2本に続く。22年かけた私にとってはライフワークだ。

 ――新作の「ソウル市民1939恋愛二重奏」はどんな物語か。

 1938年に志願兵制度が導入され、韓半島や台湾からも多くの志願兵が出た。翌39年には前年の20倍の志願兵が出ている。韓国人志願兵はなぜ戦争に行くことを選んだのか、その悩みや苦しみを描きたいと考えた。

 ――歴史を捉えなおすことは作家の使命と常々述べているが。

 この時代を振り返ると、軍部だけでなく、一般市民やメディアも戦争に加担していった。一般市民が加害者になる時が一番怖い。植民地時代の日本人が持っていた差別意識と、最近の嫌韓派の発する言葉がとても似ていることに驚く。植民地支配を現在に通じるものとして考えることが重要だ。

 ――隣国の文化から学ぶことが共に大きいと強調しているが。

 同じアジア圏である日韓の文化は似ているが、少し違う。だから比較しやすい。言わば鏡の役割を果たしている。現在は量的交流がすごいが、それを質的交流に転換させることが大事だと考えている。そのためにも両国の作家が役割を果たしたい。