ここから本文です

2012/01/27

<在日社会>在日の『声音(ソンウム)』を追求、韓国で大学生らを指導

  • 在日の『声音(ソンウム)』を追求、韓国で大学生らを指導

 在日3世の伽倻琴奏者、朴順雅さん(パク・スナ、43)=写真=は南北で伽倻琴を習い、現在は韓国の嶺南大学校、ソウル大学校などで学生を指導する一方、演奏活動に従事している。先日、ソウルと東京で初リサイタルを成功させた朴さんに話を聞いた。

 韓日で開いた初リサイタルでは、人の生「散調」、自然の語「松」などを演奏し、絶賛された。

 「散調は名匠と言われた安基玉、丁南希氏の曲で、芸の道を歩んできた奏者たちの生き様が表現されている。また『松』は昨年末に亡くなられた作曲家・三木稔さんが作られた作品で、追悼の思いを込めて演奏した。伝統芸能の真髄を伝えるべく、これらの曲を選んだが、その思いが伝わったと感じた」

 南北で伽倻琴を学び、その経験を韓国の学生たちに伝えている。

 「伽倻琴は長い間、12弦を中心に演奏されてきたが、韓国は90年代後半から25弦が普及。北では70年代から21弦の伽倻琴を多く使っている。弦の数が増えると音のバリエーションが増えるので、現代音楽とのコラボレーションなども最近は増えてきた。私も新分野に挑戦している」

 「韓国の学生たちには基礎を徹底的に教えながら、教わったことを演奏するだけでなく、一人ひとりが自らの音色「声音」を作れるように指導している。講師や教授の絶対数が足りないので、講師陣の養成が急がれる。名匠たちが亡くなる前にその演奏を引き継いでいくことも大切だ」

 在日としての生きざまを演奏に込められるかが、課題だという。

 「南北で生活して改めて在日はディアスポラ(国外で定着している人)と感じた。在日のアイデンティティーをどう演奏で表現できるか常に模索している。在日の『声音』を作りたい。在日の後輩たちには、世界に出て視野を広げ、それを演奏に生かしてほしい」

 2月に初CD、6月には福島で開かれる国際音楽祭に出演する。