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2013/05/10

<在日社会>東京の高麗博物館でハルモニたちの作品展・在日1世の思い伝える

  • 東京の高麗博物館でハルモニたちの作品展・在日1世の思い伝える

    ハルモニたちの作品展(中央は村上啓子・高麗博物館副理事長)

 東京・新宿の高麗博物館で企画展「おもいはふかく ハルモニたちの作品展―川崎市ふれあい館 ウリハッキョから―」が開催中だ。同館の識字学級で学ぶ在日のハルモニ(おばあさん)たちの書道や作文、絵画などの作品を展示し、その思いと苦難の半生を伝える。在日の歴史を知る一助にもなる企画だ。

 川崎市ふれあい館では2004年から在日コリアン1世を中心に識字学級を行ってきた。識字学級の名称はかつて、ハルモ二たちが行きたくても行けなかった学校への思いを込めて「ウリハッキョ」(韓国語で「みんなの学校」の意)と命名した。

 読み書きを学ぶ機会をずっと奪われてきたハルモニたちは、70代前後になって、ようやく自由になる時間を手にして、ウリハッキョに通った。

 「せめて60歳ぐらいから学べれば」と記憶力の衰えを嘆きつつも、自分の名前や住所、気持ちを初めて書いた。展示された作品からは、文字を知った喜びが伝わる。

 そして06年から、ハルモ二たちは絵も描くようになった。だれにでも絵が描けるように松本キミ子さんという方が考えた「キミ子方式」によるもので、赤・青・黄・白のみの絵の具を使い、思いつくままに描いていく初心者のための手法だ。

 初めて絵筆を持ったハルモニたちは、野菜、植物、魚、チマチョゴリなど身近なものを題材に、独創的で個性あふれる絵を次々に描いた。一つ一つの絵から、その人の人生が伝わってくるようだ。

 村上啓子・高麗博物館副理事長は、「字を覚え、病院や銀行で初めて自分の名前を書いたハルモニの誇り、自分の人生はつまらないと言っていた人たちが、字を書くことで自信を持てるようになった。学ぶことが生きる力になった。そのハルモニたちの力を伝えたい」と話した。さらに、「日本人には在日の歴史を知る一助に、在日の若者には、自らの歴史を知って民族を感じる一助になってくれれば」と述べた。


■ハルモニたちの作品展■
日程:開催中(6月2日まで)
場所:高麗博物館(東京・新宿)
料金:400円
電話:03・5272・3510
 *18日午後3時より同館で講演会「ハルモニたちの足跡をたずねて」あり。参加費1000円。