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2015/05/29

<在日社会>明治期外交官・若松兎三郎と韓国:共生のための苦悩 第10回                                   大東文化大学 永野 慎一郎 名誉教授

◆韓国農民に栽培させる計画樹立、農民たちは日本の官憲主導警戒◆

 また、若松兎三郎領事は綿作地に関する地方官との交渉について以下のような意見を上申した。

 「本官の見聞によれば、木浦港付近において開墾し新たに綿作地を増加できる土地は約500町歩に過ぎない故に、米国種綿花を大量栽培しようとするならば、韓国農家に綿花を栽培させる方法しかないと考える。したがって、全羅南道観察使以下各郡守に米国種綿花の栽培を奨励させるようにする必要があり、殊に、栽培協会が前述の種子園を開設するに当たり、観察使の承認を受けておくことは土地の収用上大変便利となる」

 全羅南道観察使をはじめ郡守など地方官たちは日本の官吏たちの主導で推進していた米国種綿花栽培に関して当初は収奪手段として認識し、協力的ではなかった。しかし、若松領事が直接地方官たちを訪問して丁寧に説明し、韓国の農村発展のために有益であると説得した結果、徐々に誤解が解かれ、協力するようになった。


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