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2010/02/05

<トピックス>仁川湾に湖力発電所建設へ

  • 仁川湾に湖力発電所建設へ①

    韓国水力原子力の金鍾信社長(左)とGS建設社長の許明秀社長が了解覚書を締結した

  • 仁川湾に湖力発電所建設へ②

 世界最大の潮力発電所が仁川(インチョン)湾に建設されることになった。韓国水力原子力とGS建設が2017年の完工をめざし、仁川国際空港のある永宗島(ヨンジョンド)と江華島(カンファド)南部の島々に囲まれた海域に総事業費3兆9000億ウォンで建設する。発電量は年間24億1000万㌔㍗で、世界最大のフランスのランス潮力発電所を上回る規模だ。

 潮力発電は、潮の干満で海水が移動するエネルギーを電力に変える発電方式だ。水力発電や風力発電、太陽光発電などと同様に自然エネルギーを資源活用する。火力発電のように二酸化炭素(CO2)を排出しないため、次世代の環境対応型・発電方式として注目されている。

 建設予定地は仁川、江華島南部地域、甕津郡長峯島(オンジングンチャンポンド)、龍遊島(ヨンユド)、三木島(サンモクド)、永宗島に囲まれた海域だ。発電所の施設容量は132万㌔ワツトで、蔚山(ウルサン)市に建設中の新古里(シンゴリ)原子力発電所1基(100万㌔ワツト)を超える。仁川市の家庭用電力消費量の約60%に相当する24億1000万㌔ワツトの電力生産が可能だ。

 現在、世界最大の発電容量を誇る潮力発電所は、フランスのランス川河口に建設されたランス潮力発電所だ。仁川湾・潮力発電所の発電能力はランスの3・4倍に達する。

 建設工事は年末に着工し、完工は2017年頃の予定だ。韓国水力原子力の金鍾信(キム・ジョンシン)社長は、「仁川湾潮力発電所が稼働すると、原油輸入量を年間354万バレル節減できる」と語った。今後、潮力発電が原子力発電と共に、韓国のグリーン成長戦略をけん引する2本柱になる可能性が高い。

 国土海洋部と韓国海洋研究院、韓国水力原子力、GS建設は2006年から国策事業として「海洋エネルギー実用化技術開発」研究を進めた。この研究結果をもとに年末に妥当性調査を行い、建設計画を正式発表する運びとなった。

 GS建設は第1段階として、仁川近海の各島をつなぐ防潮堤を3カ所設置する計画だ。 江華島南側と長峯島を結ぶ西側防潮堤の長さは7・3㌔で、長峯島と永宗島を結ぶ南側防潮堤は4・2㌔、さらに京仁運河の近海に4・7㌔の東側防潮堤を築く。

 防潮堤の高さは8㍍(平均海水面基準)で、満潮時に海水を湾に閉じ込める貯水機能を持つ。引き潮時に水門を開き、閉じ込められていた海水が湾の外に流れ出る力を利用して、発電用タービンを回す仕組み。

 発電用タービンは直径8・3㍍で、南側防潮堤の1・2㌔区間に建設される水門(20カ所)の間に合計44基設置される。東西の防潮堤には発電設備は設置されない。引き潮時のみ発電するので、実際にタービンが回転して発電する時間は1日10~12時間ほどだ。

 さらに、江華島と永宗島を結ぶ防潮堤には往復2車線の道路も建設される。GS建設の許明秀(ホ・ミョンス)社長は「今回のプロジェクトは、新・再生エネルギー分野における次世代成長動力を確保するということ以外に、2つの橋梁を建設することで経済効果も拡大する可能性が高い」と展望した。

 世界最大の仁川湾潮力発電所建設が本格化することで、西海(ソヘ)は世界的にも潮力発電の一大拠点に浮上する。現在、西海岸では、西部(ソブ)発電の加露林(カロリム)湾潮力発電所(施設容量52万㌔㍗)、水資源(スジャウォン)公社の始華(シファ)潮力発電所(25万4000㌔㍗)、中部(チュンブ)発電の江華(カンファ)潮力発電所(84万㌔㍗)など3基の建設が計画されている。

 このように西海岸で潮力発電所の建設が活発な理由は、海域の干満差が8㍍に達するほど大きいためだ。実際、世界で潮力発電所が建設できる国は、フランス、ロシア、カナダなど4~5カ国にすぎない。

 潮力発電所の設計に参加した韓国海洋研究院・朴振淳(パク・ジンスン)博士は「フランスの場合、干満差が最大13㍍で、韓国の西海より大きいが、西海は海岸線が複雑なうえ、大小の島が多いため、フランスよりも潮力発電所建設に適した地理的条件を兼ね備えている」と説明した。

 しかし今回の計画について、環境破壊を懸念する声も上がっている。仁川環境運動連合は「海の真ん中にダムのような防潮堤を築くことで干潟が破壊され、海水の自然な流れも遮断されるため、塩分濃度が上昇し水質が極度に悪化する恐れがある」と指摘している。一部では「政府は環境保護を言い訳に、むしろ環境破壊を招きかねない巨大な土木事業を推進しようとしている」との批判も起きている。

 特に仁川湾の北部地域では中部発電と大宇(デウ)建設などによる江華潮力発電所の建設事業も計画されている。仁川湾の潮力発電所建設を合わせた広大な建設予定地には、政府が湿地保護地域に指定した長峯島干潟と、世界の5大干潟に入る江華南端干潟が含まれる。このため、環境保護と漁場確保の観点から建設反対を叫ぶ声が日増しに大きくなっている。

 江華・永宗地域の漁業関係者も2つの潮力発電所建設計画の白紙化を求め、反対運動を展開している。このような動きの中で、仁川市も「仁川湾全体に防潮堤を建設することには問題がある」として、今回発表された潮力発電所建設計画に反対する立場を鮮明にしている。

 これに対して、国土海洋部などは「仁川湾潮力発電所は干潟の破壊を極小化する方向で設計されているため、デメリットよりもメリットのほうがはるかに大きい」と説明するなど、地元自治体と住民に対する説得を続ける構えだ。