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2010/04/23

<トピックス>低炭素社会へ幅広く協力                                                         岡山で韓日・日韓経済人会議

  • 低炭素社会へ幅広く協力 岡山で韓日・日韓経済人会議①

    記者会見を終え握手する趙錫来会長㊧と飯島英胤会長

  • 低炭素社会へ幅広く協力 岡山で韓日・日韓経済人会議②

    256人が参加した韓日・日韓経済人会議

 第42回韓日・日韓経済人会議が15日から2日間、岡山市内のホテルで双方から256人(韓国側110人、日本側146人)が参加して開かれた。今回は東アジア共同体の構築やグリーンビジネスの将来展望などをテーマに意見を交わし、高度人材の交流活発化や低炭素化社会の実現に向けて幅広く協力することで合意した。会議を振り返ってみた。(東京本社・金時文)

 今回の会議は、これまでになく「世界経済における韓日の役割」が話題にのぼり、世界の成長センターであるアジアの中軸として韓日が中国も引き入れて対応する必要があるとの意見が多かった。世界経済の主導役を担うには韓日プラス中国の協力は必要不可欠だという認識だ。また、太陽光に代表される新エネルギーの開発や次世代電力網のスマートグリッドなど新たな分野への韓日両国の取り組みなども紹介され、この分野での協力も模索された。

 韓日二国間レベルの問題にとどまらず、新産業を含め世界経済をにらんだ協力が必要だという認識が形成されたのは大きな成果だった。また、韓日FTA(自由貿易協定)とEPA(経済連携協定)の早期締結を求め、これが経済共同体の重要な前提になると位置づけた。

 今回、新たな時代に向かって韓日協力を強調する双方団長のリーダーシップが光った。開会と閉会の挨拶にその意欲が表れていた。

 韓国側団長の趙錫来(チョ・ソンネ)・韓日経済協会会長は開会式で、「ドイツとフランスが鉄のような連帯のEU(欧州連合)を実現させたように、アジア統合のためには韓日両国が求心力の役割を果たさなければならない」と述べ、「米国と西欧主導で世界経済と金融秩序がなされた時代は過ぎた。いまやアジアが世界経済の成長発展と金融秩序維持に主導的な役割を果たさなければならない。このためアジアの域内交易を活性化し、果敢な開放が必要だ。未来を志向し新しい歴史をつくろう」と強調した。

 日本側団長の飯島英胤・日韓経済協会会長は、閉会に際して「日韓関係、それをサポートする今会議は新しい時代を迎えている」として次の3つの点を指摘した。①自然との共生が経済界でも強く求められており、低炭素社会は世界共通課題②アジアが成長センターとして主導益役割を担う中で日韓、さらには中国を含めてリードすべき③日韓はともに貿易立国で少子高齢化社会。一国だけではできない分野や相互依存関係で、協調し合う要素が増える。

 今会議では様々な報告と討論がなされた。新産業貿易会議の報告では、麻生泰・日本側チェアマン(麻生ラファージュセメント社長)が人的交流と対韓投資に関する活性化策を求めて提案。呉永鎬(オ・ヨンホ)・韓国側チェアマン(韓国貿易協会副会長)は、韓日の部品素材産業協力と対日投資に対する報告を行い、対日輸入に占める日本製部品・素材の比率が昨年には61・3%に拡大している現状の打開を求めた。

 また、「東アジア経済連携と日韓経済協力」をテーマに深川由起子・早稲田大学教授の司会で行われた第1セッションで、河合正弘・アジア開発銀行研究所長は、「韓国は最適な仲介者の役割を果たせる。韓国が中心となる共同体作りが望ましい」と力説。李景台(イ・ギョンデ)・韓国貿易協会国際貿易研究院長は、「中国も引き入れてやるべきだ」と指摘。韓日FTAについて、李洙喆(イ・スチョル)サムスン物産顧問は、「韓国が求めている非関税障壁の除去にもつながる」と締結のメリットを指摘した。上野健二・東レ国際部門長は、85年から22回開催している韓日繊維産業連合会の連携を紹介、政府間のFTA交渉を先導できるとの考えを示した。

 小此木政夫・慶応大学教授の司会で行われた第2セッション「今後の環境経営とグリーンビジネスの展開と展望」では、劉燃哲(ユ・ヨンチョル)・外交通商部緑色環境協力官が、「韓国は近代化では立ち遅れた。未来産業では立ち遅れずにリーダーシップを発揮したい」と指摘、環境問題に関しては「問題発生源の中国、解決能力がある日本、推進力の韓国というパターンは世界的なモデルになり得る」と力説し、注目された

 会議を終え発表された共同声明は①高度人材交流の活発化②部品・素材産業の協力強化③貿易・投資の活性化④韓日FTA/EPAの早期実現⑤低炭素社会の実現に向けた協力などを謳った。

 政府間交渉が中断したままの韓日FTA問題は、これまで大きな進展はない。飯島会長は「鳩山政権は政治課題として取り組む意思表示を明確に示している。経済界も早期に締結できるように努力したい」と語った。趙会長は「両国FTAは東アジア共同体形成の基本になっている」として、FTAを推進のためには、部品・素材問題を解決すべきだと指摘した。

 両会長は、中国との協力については韓日連携を機軸にしながら中国も入れて3カ国の機軸経済連携をテーマに取り上げていくことで一致した。

 高度人材の交流について飯島会長は「韓国から1万8000人が留学しているが、日本で就職希望してもなかなか実現しない。FTAの中に労働市場の開放・共有を盛り込めば双方で雇用の機会を得られる。日本の経営者も韓国の留学生を積極的に活用するという意識改革をしてほしい」と強調。趙会長は、「低炭素・グリーン成長は、新たなビジネス創出に良いアイテムになる。お互いが持つ強みを生かして協力することが重要だ」と語った。

 基調講演で李洪九(イ・ホング)・元国務総理は、2002年のワールドカップ共催の成功について、「相互協力による共同開催にこぎつけた発想の転換」を力説したが、発想の転換は新しい時代を切り開くうえで重要だろう。これは両会長も強調していたことだが、「過去は変えることができないが、未来は切り開くことができる。未来志向と信頼の絆を強め、韓日両国が力を合わせ、世界経済を主導するアジアの中心軸になろう」――そんなメッセージが込められた会議だった。