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2010/04/30

<トピックス>韓日WinWin戦略を                                                           駐日韓国企業連合会 李 揆弘 新会長

  • 駐日韓国企業連合会 李 揆弘 新会長

    イ・ギュホン 1984年LGグループ企画調整室入社。98~2000年LG半導体日本支社長。00~01年構造調整本部常務。02年㈱コンジアムレジャー代表理事。05年LG電子副社長。06年からLG電子(現エレクトロニクスジャパン)社長。10年3月駐日韓国企業連合会会長に就任。

 第14代駐日韓国企業連合会(韓企連)会長に李揆弘(イ・ギュホン)・LGエレクトロニクスジャパン社長が就任した。世界市場で韓国と日本の企業は競争を激化させているが、日本市場ではどう戦うのか。李新会長に韓企連の役割などを聞いた。

 ――韓企連の今年の重点事業は。

 これまで毎年やってきた事業は継続するが、今年は新たに加盟350社に勤務する日本人の優秀社員40人を選び、韓国での産業視察を6月に予定している。反応を見ながら、参加人数を2倍に増やし、年1回から2回に増やす計画だ。もう一つは消費者を対象に韓国企業と韓国商品に対するイメージ調査を実施、その結果を各企業経営に反映する事業を展開していきたい。これまで韓国といえば、韓流文化やキムチなどの食品が連想されがちだが、今後はビジネスや商品といったイメージも浮かぶようにしたい。韓国企業といえば、デザインや品質が優れているといわれるような活動をしていかなければならないと考えている。

 ――韓日関係が年々緊密化しているが、新会長が考える韓企連の役割は。

 韓国と日本は長い歴史を持っている。特に韓国の電子部品産業は、ほとんど日本から学び育ってきたといっていい。最近でこそ、ある特定のアイテムでは日本を追い越しているが、全般的にはまだまだ日本からいろいろ教えてもらわなければならない。

 われわれ駐日企業は、販売だけでなく購買も行っている。だから韓国の商品を日本のお客様に紹介するだけでなく、日本の部品とか設備、素材を韓国に輸入して紹介する役割もしている。また、350の会員企業が、日本で商品を購買・販売するうえで、どういう障害があり、痛みを受けているのかを調査し、日本の経済産業省や韓国大使館を通じて、改善の要望を出したりもしている。

 ――世界市場で活躍する現代自動車は日本市場では乗用車部門の撤退を余儀なくされ、サムスンも一般向け家電部門から撤退した。韓企連としての日本市場開拓策は。

 日本が大変厳しい市場であることに間違いはない。なぜ厳しいかといえば、消費者の目が非常に高い。デザインや品質、機能、特に品質に関しては非常に厳しい。それと日本は、自動車や電機など、それぞれの分野に多くのメーカーがひしめいている。必然的に競争が厳しくなる。その中で戦って勝つためには、いろいろな技術を開発して差別化していかなければならない。日本のメーカーは、そうやって互いに戦いながら日本の産業を育て、すばらしい製品が生まれてきた。それが技術の進歩であって、進化でもある。

 その特化された技術がない海外メーカーとしてみたら、これを全部開発して同じ土俵に立つには大変な投資が必要となってくる。こうした背景から日本市場の壁は高いと思うわけだ。だから米国には今、総合家電メーカーと呼べる会社がない。韓国はサムスンとLGの2社が総合家電メーカーだ。日本は1億3000万人でAV関連を含めると10社がひしめいている。日本の企業がある程度再編を迎えた時に、再びアプローチする機会が訪れると思う。

 ――日本の中で「韓国に学ぼう」という機運が起きている。どのように受け止めているか。

 1998年に日本に来た時とはだいぶ事情が変わった。まず韓国に対する日本の方たちの思いというものが変わった。日本に来たばかりの頃は、日本の方々は、あまりキムチを食べなかったが、今ではキムチを置いていないゴルフ場がほとんどないほどで、スーパーではナムルまで売っている。

 日本のメディアで「韓国に学ぶべきである」という記事が報じられたことは、不況から韓国がいち早く立ち上がったことが一つの理由になっているのだろう。2つ目はバンクーバー冬季五輪でなぜ韓国がフィギュアやスピードスケートで躍進したのかという点だろう。だが、具体的に何を学ぶべきかという点についてはクエスチョンだ。

 もちろん、韓国企業経営者の決断力の早さや世界に張り巡らされたネットワークの強さ、アラブ首長国連邦(UAE)での原発受注などがインパクトを与えたのだと思う。また、バンクーバー五輪では、国が支援金を支給して練習させ、メダルを獲得すれば多くの特典を得られるという仕組みが効果を上げたのは間違いないだろう。しかし、韓国が伸びているから羨ましいと見せて、逆に日本全体に警戒心を与えているのではないか。

 われわれはもっと身の丈を知り、謙虚になって日本の学ぶべきところは学ぶべきだ。日本はもともと素材や部品、設備などの産業が非常に強い国だ。全体的に競争力を持ち、技術力もある。韓国では、トヨタのリコール問題を受けて、これを教訓にして、もっと品質管理を徹底させようと、シビアに厳しい目でみている。

 ――地球温暖化問題、少子高齢化問題、次世代産業など韓日が共同で取り組むべき課題が少なくない。韓企連も何か事業として取り組む考えは。

 さまざまなコラボレーションができると思う。国よって役割分担するとか、ジョイントベンチャーを立ち上げるとか、資源の共同調達とか、あるいは世界市場向けに共同販売すとかいろいろなことができるだろう。

 貿易不均衡の問題は解決しなければならないが、韓国も部品・素材分野の強化を進めるなど、自らも努力していく姿勢が大事だ。また、韓国を中国市場への中継地点とし、日本と共同進出するといった戦略も必要だと思う。最近は競争をしながら協業をするというケースが目立つ。互いに競争相手としてみるのではなく、パートナーとして認識すべきだろう。

 ――最後に韓日の経済関係のあり方についての提言を。

 韓国と日本は地理的にも近く、李明博政権と鳩山政権は、かつてない緊密な関係にある。経済界も同じで、WinWinのパートナーシップを築かなければならない。日本の持つ競争力と韓国が持つ競争力を融合させ、世界を相手にグローバル市場で協力できるよう努力していきたいと思う。また、互いに目先のことだけではなく、大きな絵を描き、長いスパンでみることが大事だ。両国民がこれほどまで親しみを感じるようになったように、まず国や企業が信頼を構築したうえで、これを実現しなければならない。こうしたことを韓国と日本の財界がリードしていくべきだと思う。