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2011/08/19

<トピックス>「共生発展」の新経済モデル

  • 転換期の韓国経済 第19回

                 演説する李明博大統領

 李明博大統領は15日、ソウル・世宗文化会館で開催された光復節66周年記念式の慶祝辞で、「共生発展」へ向けた新たな市場経済モデルを作る考えを示した。これは、政府が掲げている「公正社会」「庶民に優しい経済」「大企業と中小企業の協力成長」を統合・発展させた概念で、社会的格差を減らすことができる経済発展をめざすことを闡明にしたものだ。

 李大統領は慶祝辞で、「我々がはっきりと認識すべきことは、既存の市場経済が新たな段階へと進化すべきだという事実だ」とし、「強欲経営から倫理経営」へ、「資本の自由から資本の責任」へ、「富益富、貧益貧(富める者はさらに富み、貧しい者はさらに貧しくなる)から共生繁栄」へ進化する市場経済のモデルが求められていると述べた。

 また、「我々が進むべき道は明確だ」とし、地球環境保全と経済繁栄、成長と生活の質向上、経済発展と社会統合、国の発展と個人の発展をともに成し遂げる新しい発展体制を築き上げることだと力説。「発展の量に劣らず質が重要だ」と強調した。

 さらに、ライフサイクル全体にわたって「自らの幸福を自由に追求できる社会」の実現をめざし、市場経済の新たなモデルとして「共生発展」(Ecosystemic development)の概念を提示した。

 共生発展とは、Ecosystem(生態系)という概念にDevelopment(発展)を組み合わせた言葉で、朴亨埈(パク・ヒョンジュン)・大統領社会特別補佐官が作った造語。エコシステムという単語は、本来は生物学における生態系を意味するが、近年では経済的な依存関係や協調関係など企業間の連携関係全体を指す言葉として使われている。

 つまり、倫理経営と資本の責任を土台に既存の市場経済が新たな段階へと変わらなければならず、その政策意思として「共生発展」の考えを打ち出した。韓国の経済社会は様々な分野で二極化が進んでおり、この問題解決のため「成長社会から成熟社会への転換」を求める声が少なくない。今回の新たな経済モデル提示で、今後の政策がある程度読めるようになりそうだ。

 李大統領や参謀は、経済成長過程で疎外された階層に対する関心と配慮が必要だとする「資本主義4・0」の流れに深い関心を寄せており、今回の慶祝辞にもその考えが反映されている。資本主義4・0とは、英ザ・タイムズ紙のエコノミスト、アナトール・カレツキー著 『資本主義4・0~新しい経済の生誕』で打ち出された概念。資本主義の進化過程を段階わけすると、現在は4番目のバージョンに当たる。自由放任主義の古典資本主義(1・0)、1929年の大恐慌後にケインズが打ち出した修正資本主義(2・0)、70年代の市場万能の新自由主義(3・0)に続く段階だ。市場の機能は重視するが、市場参加者の社会的責任とともに「共に幸福な成長をめざす」温かい資本主義だ。

 李大統領は残り任期に政策の舵を大きく切り、就任当時打ち出した企業に優しい政策から弱者支援の政策に集中することになりそうだ。


◆財政健全性を力説◆

 李大統領は今回の慶祝辞で、最近の欧米の財政危機を他山の石に、財政健全化についても力説した。李大統領は、無償給食など最近の各種福祉政策の提案について「政界の競争的な福祉ポピュリズムが、国家不渡りの事態が生じた国々の前轍を踏んではならない」との考えを示し、「財政が枯渇すれば福祉も持続できなくなる。裕福な人々にまで福祉を提供することで生活が苦しい人々のための福祉がおろそかになることがあってはならない」と指摘した。

 続けて、08年の世界金融危機に「韓国経済が健全だったため、うまく対応することができた」と評価。「財政危機は最も危険な危機だ。任期内の2013年までに可能であれば均衡財政を達成するよう最善を尽くしたい」と約束した。