ここから本文です

2012/10/19

<トピックス>IMF・世銀総会、世界経済の現状を警告

  • IMF・世銀総会、世界経済の現状を警告

                 基調演説するキム世銀総裁

 3年に1回のIMF(国際通貨基金)・世界銀行の年次総会が9日から14日まで東京と仙台で開かれた。世界経済危機の回避が最大の課題だったが、「景気の一層の下振れリスク」を警戒して各国が結束することで一致をみたものの具体的な処方箋は出されなかった。一方、いまひとつの大きなテーマの開発途上国の開発、貧困問題の解決について、今回が国際舞台初登場のジム・ヨン・キム世銀総裁は基調演説(別掲)で「貧困のない世界」の実現を訴え、途上国支援を強く打ち出した。韓国は、先進国と途上国の懸け橋の役割を強めるため、世銀の韓国事務所誘致に成功した。(2面に関連記事)

 今総会に併せて、G7(先進7カ国)の財相会議も開かれた。欧州の金融危機が長引き、経済の減速が新興国まで及んでおり、世界経済の減速への危機感を共有し、今後も動向を注視することを確認した。だが、共同声明も出されず、ほとんどの諸問題は先送りされた。

 米国は、来年には一層の減速が予想される。ブッシュ大型減税が今年末で終わり、強制的な歳出削減が予定されている。6000億㌦の財政改善効果が期待されるが、何らかの対策を講じなければ、急激な財政引締めが需要を大きく抑える可能性がある。これを「財政の壁」「財政の絶壁効果」呼んで警戒しているが、これに対する対策も示されなかった。

 「欧州危機はグローバルな経済の問題」であり、新興国や途上国にとって危機の波及に他ならない。実際に、今総会で新興国・途上国から「我々の成長を妨げている」との指摘が出た。総会には多くのアフリカ諸国が参加したが、「欧州など先進国の危機はアフリカにもつきまとっている」と懸念を示していた。

 IMFの主な国・地域が参加する国際通貨金融委員会は共同声明で「新興国経済は減速しており、成長を支えるために柔軟に政策を打ち出す必要がある」と訴えた。朴宰完(パク・チェワン)・企画財政部長官も、危機の震源地である欧州に対し、自ら解決するという姿勢で事態を収めるよう求めた。

 このように「負の連鎖」を食い止めるため、先進国側の責任ある対応が求められているが、今総会では具体的な対策は講じられなかった。

 一方、世銀・IMF合同開発委員会は、「雇用は貧困削減の原動力」とする共同声明を発表した。途上国の開発や経済発展の支援を使命とする同委は、各国に雇用創出を促す政策を強化するよう求めた。キム総裁も途上国支援に全力を挙げると宣言した。

 韓国にとっては収穫が少なくない総会だった。朴長官とキム総裁の間で世銀の地域事務所を来年韓国に開設することで合意。15日にソウルでMOU(了解覚書)を締結した。また、韓国と世銀間の協力基金設立のMOUも結び、韓国が来年から3年間に9000万㌦を支援することになった。

 キム総裁は、韓国の経済成長モデルを途上国に広める方策を共同開発しようと朴長官に提案していた。朴長官は「韓国の発展経験と知識は韓国だけでなく国際社会の協力成長のための人類共同の資産だ」と応じ、積極的に推進すると強調した。

 朴長官はまた、今総会で韓国政府が世界農業食糧安全保障プログラムへ3000万㌦を新たに支援することを決めたと明らかにした。このように、途上国のモデルとして韓国の役割が拡大している。世銀との共同事業が成果を上げ、広がることが期待される。


◆「貧困のない世界を」~キム世銀総裁演説~◆

 世界金融危機から4年経ったいまも、我々は依然として、経済の安定性の再構築、信認の回復を模索しています。ヨーロッパで続く経済・金融不安は、引き続き途上国の成長と雇用を脅かし続けています。

 私は、人々が貧しさゆえに、心も体も暴力で傷つけられるのを、この目で見てきました。このような状況は人間性を失わせるものです。また、社会から疎外された人々が極めて強い決意で自らの尊厳を守ろうとしているかを目にしてきました。なぜ、貧困のない世界という我々の決意は、彼らの決意ほど強くないのでしょうか。

 現在の困難な状況においては、開発に対する支援は他の優先課題の前に影が薄くなりがちです。現在の経済情勢で、国際開発への支援を新たに約束したりする余裕などない、という主張を耳にされたことがあるでしょう。

 私はこうした主張に反論を述べさせていただきます。いまは繁栄を共有する新たな時代を築くための好機であり、我々はそうする責任があると確信しています。10億人以上が最貧国の状態にあり、失業者が2億人に上る今。各国がそれぞれに狭い視野で時刻の利益のみを追求するときではありません。

 私は子供の頃に韓国から米国に移住しました。当時の韓国はよく「無力なヤツ」だと言われていました。しかし、韓国経済の成功は、いかなる国に対しても二度とそのような失礼な、または悲観的なレッテルを貼ってはならないことを証明しています。努力しようと思えば、最貧国の人々を事実上ゼロにすることが可能です。この目標は手の届かないものではありません。

 では、その実現のためには何が必要でしょうか。脆弱国は脆弱性からの脱却に対してソリューション(解決)を求めています。これまで以上の緊迫感をもって脆弱国支援を進めていく必要があります。

 我々はナレッジ・バンク(知識銀行)からソリューション・バンク(解決銀行)へと生まれ変わらなければなりません。耳を傾け、学習し、各国や受益者と協力し、ボトムアップ型のソリューションを構築しなければなりません。そろそろ貧困のない世界を夢として語るのではなく、実現しようではありませんか。