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2013/05/31

<トピックス>アベノミクスを注視する韓国

  • アベノミクスを注視する韓国

    外換銀行のディーリングルーム

 円安、株高を呼び込んだ「アベノミクス」(安倍政権の経済政策)がここにきて変調をきたしている。長期金利が上昇し、株価は急落するなど乱高下している。このような変調に韓国は、敏感に反応、様々な見方が出ている。

 韓国では最近、アベノミクスに対する見方が厳しくなっている。

 パリで開催中のOECD(経済協力開発機構)閣僚会議に出席している玄旿錫(ヒョン・オソク)・経済副総理兼企画財政部長官は「構造改革と実体経済の改善に役立たない量的緩和は持続可能な成長を保障しないため砂上の楼閣だ」と指摘し、「韓国をはじめとする近隣国に為替変動性の拡大という副作用をもたらしている」と批判した。

 韓国の多くの専門家達は「アベノミクスの本質は国家主導で人為的なバブルを作ることだが、2種類の致命的な弱点を抱いている。まず、インフレ期待で金利が急騰すれば、企業は投資をためらい、経済活性化は水泡に帰す。政府負債の利子負担が増え、財政が崩れる。もうひとつは、賃金は上がらず、円安で輸入物価だけが高騰すれば『だれのためのアベノミクスか』という政治的反発が頭を上げるはずだ」と指摘している。

 韓国でいま心配されているのは、韓国内の日本資金が流出する可能性についてだ。長期金利上昇で国債価格が暴落すると、日本国債を大量に保有する銀行が被害を受け、信用が低下する。その場合、銀行が資金難に陥るのを防ぐため韓国に投資した資金を一気に引き揚げる恐れがある。事実、1997年に韓国が通貨危機に見舞われた際、日本が円建て資金を一度に回収したため、危機を加速化させた。

 また、実体経済の回復なしにインフレを誘発し、財政への不安から国債価格が暴落した場合、円安をさらに押し進めることになると警戒している。円安を一層進行させれば、韓国の輸出企業の競争力はさらに低下する懸念があるからだ。

 特に、アベノミクスがもし失敗すれば、日本経済が再び長期低迷することを意味し、韓国の日本向け輸出企業にも大きな痛手となる。企画財政部関係者は、「アベノミクスが失敗し日本経済が崩壊すれば、韓国にとって最悪のシナリオだ」として「日本の景気回復と円安抑制が韓国にとって望ましい」と語った。

 財政基盤が弱い状態でアベノミクスを推進したのが失敗だとの見方もある。「日本国債は現在、発行残高がGDP(国内総生産)の約2・4倍になる」として、財政改革が必要だと指摘している。

 韓国の専門家たちがより深刻にみているのは、円安でも貿易収支が改善しない点だ。4月の貿易赤字は8800億円で、「円安→輸出増加→貿易収支改善→景気回復」というサイクルを掲げるアベノミクスへの信頼が揺らぎかねないと懸念している。

 一方で、アベノミクスの先行きを早急に判断してはならないとの見方も多い。アベノミクスによって日本経済がどのように変化するかについて、多様なシナリオに基づく対策を用意する必要性が指摘されている。韓国経済にとって、アベノミクスは成功しても失敗しても影響が大きい。