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2013/06/14

<トピックス>円高克服した企業にヒント

  • 円高克服した企業にヒント①

    外換銀行のディーリングルーム

◆KOTRA報告書・円安ウォン高時代の示唆点◆

 KOTRA(大韓貿易投資振興公社)は報告書「日本の円高克服事例からみる円安ウォン高時代の示唆点」を通じて、日本の安倍晋三政権が掲げる経済政策「アベノミクス」による円安傾向が続く中、日本の主要企業の円高克服事例を紹介し、韓国企業の対応案を提示した。

 報告書によると、円相場は1970年代から約40年間にわたり400%近く上昇し、これが日本企業の収益・競争条件を悪化させてきた。また、1985年のプラザ合意以降、円高に見舞われた日本企業はコスト削減を中心に行ったが、1990年代以降は生産拠点を海外に移転したり、製造技術を差別化したりして円高を乗り越えたと報告書は指摘した。

 また、90年代以降には、単純な合理化や原価節減という次元を超え、強い製造現場を維持するための差別化された製造技術を蓄積するなど、自己救済努力を通じて円高時期を乗り越えてきた。

 一例として日本国内よりも海外でより多くの車を販売するトヨタは、1980年代半ばから続いた円高に苦しめられた。トヨタはこのため、生産革新によるコスト削減で危機突破に臨んだ。まず、トヨタは作業の無駄を徹底的に省いて生産性を高め、必要な物を、必要な時に、必要な量だけ生産する「カンバン方式」を導入して在庫をゼロ近くに維持。様々な部品の金型サイズを10~15%削減し、設備投資のコストを40%削減した。また、熟練工が持ついくつかのノウハウを機械化し、熟練工にはよりハイレベルな業務を担当させ、コストと製品の品質を高めた。2008年、トヨタは円高や世界的な景気低迷の影響で、70年ぶりとなる営業赤字を記録して最大の危機を迎えたが、こうした努力によって円高の危機を無事に乗り越え、今年は過去最高の実績を達成すると予想される。

 トヨタの他、日立や東芝など日本の主要メーカーは、コスト削減や海外生産拠点を拡大するための戦略などを通じて円高の被害を最小化しようとした。東芝はパソコンと液晶テレビなどの家電製品を海外で製造しコストを削減、無線通信機器メーカーのユニデンは、全製品の生産をフィリピンや中国など海外に依存し、国内拠点は研究開発(R&D)と事務管理に集中する形で縮小した。日立は1985~95年の間、米国の8カ所に生産拠点を設置し、海外子会社との分業を通じてグローバルな生産ネットワークを構築した。

 一方で危機を機会として活用して積極的な合併•買収(M&A)に乗り出して規模拡大した企業もあった。円高が続き他の国よりも少ない費用で海外企業の買収に乗り出すことができたからだ。その中でもダイキンは、米国エアコンメーカーのグッドマンを買収、計測器メーカーのアドバンテストは、米国の検査装置メーカーを買収し、事業領域を広げた。

 このほかにも、日本企業は世界最大の企業に成長するための「オンリーワン+ナンバーワン戦略」と新市場開拓戦略を活用するなど、円高の危機を克服した。KOTRAは「円安ウォン高で韓国企業が苦戦する状況で、日本企業の事例を見習って韓国企業は製造業の競争力を強化するための必要な対策を講じなければならない」と指摘。一部専門家が円安は2年以上長期化すると見通しを出している状況で、短期的な資金支援や低賃金によるコスト削減だけで円安の危機を克服するのは難しいという意味だ。KOTRAは、「長期的な円高という厳しい試練を経験して進化してきた日本企業の事例を韓国企業が反面教師として活用しなければならない。生産コストを削減し、積極的な海外M&Aを展開、世界一流企業の成長戦略を見習うなど、さまざまな方法を活用して企業競争力を高めなければならない」と強調した。

 また、「最近の円安によって日本製品の価格競争力が向上しており、円高の時期に海外市場シェアを急速に拡大してきた韓国企業としては、相当な脅威的要因として作用する見込み」と指摘。長期間にわたって持続してきた円高時期に過酷な経営環境を経験しながら得た日本企業の経営戦略は、円安ウォン高の危機にさらされた韓国企業が難局打開のために積極的に活用すべきと主張している。さらに原価節減以外にもグローバル競争力の強化、生産技術の革新、核心技術の多角化などの推進も挙げている。