ここから本文です

2013/09/20

<トピックス>切手に描かれたソウル 第37回 「韓国の食シリーズ」                                                 郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に描かれたソウル 第37回 「韓国の食シリーズ」

    秋夕に欠かせない菓子「松餅」

◆秋夕の菓子「松餅(ソンピョン)」地域ごとに色も形も豊富◆

 今年の秋夕は9月19日。したがって、本紙の刊行日にあたる20日は韓国では秋夕の連休中ということになる。

 秋夕に関する切手はいくつかあるが、今回は、2002年に発行された「韓国の食」シリーズ第2集のうち、秋夕の代表的なお菓子である松餅を取り上げた1枚をご紹介したい。

 松餅は、米粉で作った皮の中にゴマや豆、小豆、栗、ナツメなどを入れて、松葉を敷いた蒸し器で蒸す餅菓子。

 松葉を使うのは、もともとは蒸し器の中で並べた餅がくっつかないようにするための知恵だったが、松葉の香りが餅に移り、上品な味に仕上がるという効果がある。また、松葉は防腐作用があることから仙人食ともいわれており、そうしたことが重なって、秋夕に欠かせないものとなったのであろう。

 さて、韓半島全域で見られる松餅だが、色や形などにはさまざまなバリエーションがある。一般には、北に行くほど一つの餅が大きくなり、南に行くほど小さくなる傾向がある。

 韓国各地の松餅の特徴を道ごとにまとめてみると―

 京畿道 米粉に色をつけて、3色または5色の松餅を作る。黄色はかぼちゃ・くちなしで、緑は蓬・カラムシの葉、黒は松の木の内側の薄皮、赤は五味子、紫芋・ブドウの汁などで着色する。形は半月形。

 江原道 特産のジャガイモのでんぷんで生地を作るカムジャソンピョン、どんぐりの粉と米粉を1対3の割合で混ぜて生地を作るトットリソンピョン、くず粉で生地を作るチソンピョンがある。3本の指の跡をしっかりと押し付けるかたちが特徴。

 忠清道 かぼちゃを干してから粉にして、米粉と混ぜて作るホバクソンピョンが有名。形は半月形。

 全羅道 花を意識したコッソンピョンは、色とりどりにして花の形に作ったり、半月形の餅(ただし、餅を押しつけて閉じるのではなく、巻き込むように閉じる)に花のデコレーションをしたりする。このほか、カラムシの葉を混ぜたモシソンピョンや、ちがやの新芽を米粉に混ぜたピルキソンピョンなどがある。

 慶尚道 松餅といいながら、松葉が使われないことが多い。この地域独特のものとしては、花の形に作るソンピョンクルトック、柏の葉で包むコッチャンソンピョンなどがある。

 済州島 丸い満月形のもののほか、銀杏の葉の形や舟形など、さまざまな形がある。

 モノクロの図版ではわかりづらいのだが、切手に取り上げられている松餅は、黄色と緑、白の3色で、一般的な半月形だから、ソウルを含む京畿道のスタイルのものではないかと思うのだがいかがだろうか。

 なお、かつては秋夕の代名詞だった松餅だが、現在では、ソウル市内のデパートなどで年間を通じて買うことができる。また、地下鉄の鐘路3街の周辺には、青瓦台御用達の名店、楽園餅店をはじめとして韓国菓子の店が軒を連ねている。

 おそらく、切手のデザインを担当したスタッフもそのうちの一軒で松餅を買ってきて原画用の写真を撮影したのではないかと僕は睨んでいるのだが、次回のソウル行きの際には、切手になった餅を探して歩いてみるのも楽しそうだ。