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2015/05/15

<トピックス>明治期外交官・若松兎三郎と韓国:共生のための苦悩 第9回                                   大東文化大学 永野 慎一郎 名誉教授

◆綿花再試作地は木浦など5カ所、米国種綿花が適していると判明◆

 安藤技師一行は全羅南道観察使を訪問した。各地における綿花試作の状況を説明し、南平においても綿花を試作したいと郡守に土地使用に関し便宜を与えるよう要求した。南平郡守は貴官より綿花試作に関し相当な便宜を与えるよう命令があれば、南平の綿花試作は郡民にとって利益が至大であるため、喜んで斡旋の労をとりたいと言っている。南平郡守に対し斯様な命令を発してもらえないかと要請した。

 意外にも観察使は自分の職権では斯かる命令を発する権限がないと領事館側の要請を拒否した。観察使は従来の例を挙げ、「これまで相当な地位の日本人が韓国内を視察する場合は、日本国公使より韓国外務部に照会し、外務部は内務部へ、内務部はさらに関係観察使に相当の便宜を与えるべき旨命令を発するのが例であったが、安藤技師は単純な視察に止まらず、土地を使用せんとし、このような手続きもないのに、観察使の独断で命令を発するのは困難である」と述べた。


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