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2015/07/24

<トピックス>経済・経営コラム 第70回 日韓の所得格差                                                     西安交通大学管理大学院 林 廣茂 客員教授

  • 西安交通大学管理大学院 林 廣茂 客員教授

    はやし・ひろしげ 1940年韓国生まれ。同志社大学法学部卒。インディアナ大学経営大学院MBA(経営学修士)課程修了。法政大学大学院経営学博士課程満了。長年、外資系マーケティング・コンサルティング会社に従事。滋賀大学、同志社大学大学院ビジネス研究科教授を経て中国・西安交通大学管理大学院客員教授。日韓マーケティングフォーラム共同代表理事。著書に「日韓企業戦争」など多数。

◆「事実」と「認識」のパラドックス◆

 「日本は相対的に平等社会で、韓国は相対的に不平等社会である」「だから、日本人の不平等感はそれほど強くないが、韓国人のそれは大変強い」。こんな認識が私にあった。本当にそうか、と分析をした。初めに分析結果を要約する。

 日韓の所得レベルは、ドル表示の購買力基準で現在ほぼ同等だ。所得格差の度合いを示す「ジニ係数や貧困率」などでみると、韓国の方が日本よりも所得分布は平等だ、と言える。つまり、所得の流動性では韓国の方がより平等なのだ。しかし、ストックである家計資産の日韓比較では、購買力換算で、一人当たりの資産額は日本が大きい。また、老後の年金受給額は日本が大変大きい。所得格差の大きさへの認識では、「日本ではそれほど不満は強くないが、韓国では大変強い」。

 国連統計によると、一人当たり14年のGDP(所得水準の類推ができる)の日韓比較は、名目では100対70だが、購買力基準で、日本3万7000㌦と韓国3万5000㌦、比率は100対95である。日韓の一人あたりの所得水準(平均値)はほぼ同じだ。日本の1万円は韓国で約1万3600円の購買力を持つからである。しかし、平均値では所得分布の平等性はわからない。そこでIMFの「所得分布」で、所得格差の国際比較をした(12年ベース)。

 比較は3項目で、ジニ係数(所得分布が0に近いほど平等で1に近いほど不平等)、トップ10%の高所得者とボトム10%の低所得者との所得額比率(数値が高いほど所得格差が大きい)、相対的貧困率である。韓国の所得分布は、3つの項目全てで、日本よりも一段と平等であると読める。ジニ係数(所得再配分後)は日本が0・336で韓国0・302、先進国で最高の不平等国・米国は0・401。貧者と富者の所得格差は日本10・6倍、韓国10・1倍、アメリカ18・8倍だ。貧困率では日本16・0%、韓国14・6%、米国は17・6%。

 韓国の貧富の差の大きさを家計負債額で裏付ける論議がある。家計負債(14年)は120兆円の巨額になり、GDPの93%、可処分所得の1・5倍もの借金を背負っている(日本は可処分所得の83%)。低・中所得層ほど負債比率が高い。一方、家計資産は日本2580兆円対韓国600兆円で(中央日報電子版13年10月23日)、日本が4・3倍大きいが、世帯あたりに換算すると100対60、購買力では100対82である。実質で2割ほど日本人の資産が多い。資産の内訳では、日本はその60%を高流動性の金融資産が占め、韓国は75%を低流動性の実物資産が占める。実物資産を持つ人(少数)と持たない人(大多数)の格差が大変大きいのは両国共通である。


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