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2015/09/11

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第59回 潭陽世界竹博覧会                                                         郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に見るソウルと韓国 第59回 潭陽世界竹博覧会

    潭陽世界竹博覧会の記念切手

◆竹の可能性追求し、竹への国際的関心を◆

 来週17日から10月末まで、全羅南道の潭陽で「2015潭陽世界竹博覧会」が開催される。これに先立ち、韓国では、8月14日、さまざまな姿の竹を取り上げた記念切手を発行した。

 世界には1500種余りの竹があるが、もともと韓国には真竹、淡竹、孟宗竹を中心に19種が自生していた。現在では、日本統治時代に持ちこまれた品種を含め、156種が確認されている。

 韓国では、忠清南道・泰安半島から江原道・高城を結ぶラインが竹の北限となっており、潭陽などの湖南地方と晋州・巨済などの嶺南地方が主な産地となっている。

 このうち、今回の博覧会が行われる潭陽は、韓国全体の竹林面積(7039㌶)の4分の1に相当する約1800㌶の竹林があり、竹の里として有名だ。

 このため、竹工芸品の展示や販売、工芸体験などを通じ、竹文化の伝統を継承・振興を目的とした韓国竹博物館が設立され、同館が現在地の川辺里に移転した1998年以降、毎年、全国の竹製品の品評会などを含む竹祭りが行われてきた。

 今回の博覧会は、それを国際イベントとして大幅に拡大し、「竹の森で見つけた緑色の未来」をテーマに、強い成長力を持つ竹の可能性を追求し、竹への関心を世界的に高めることを目的として開催されるもので、敷地面積約16・5万平方㍍の庭園、竹緑苑をメーン会場の〝屋根のないテーマ館〟として、さらに生態館、歴史館、科学館などが設けられる。ちなみに、竹緑苑は03年にオープンし、その竹林は映画やテレビドラマ、韓国観光公社のCMなどにも使われているので、それと意識しなくても、目にしたことのある人は多いのではないかと思う。

 韓国の伝統文化の中では、竹は民間信仰で神を招いたり、降臨させたりする場所を示す神竿の材料として使われるほか、ソルラル(旧正月)の早朝、門の外で竹を燃やし、その音によって雑鬼を追い払う習慣がある。また、新羅時代の説話「竹筒美女」も有名だ。

 物語では、新羅による朝鮮統一に功績のあった将軍・金庾信(595~673)が西州からソウルに戻る道で、ある旅人と出会い、道中を共にした。旅人は竹筒を持っていて、それを振ると、中から2人の美女が出てきた。ソウルに着いた後、庾信と旅人、2人の美女は南山の松の下で宴を開いたが、宴も終わりに近づくと、旅人は「自分は西海(黄海側)の者だが、東海(日本海側)の女と結婚した。これから、妻と共に両親を尋ねに行くところだ」と言い、突然起きた風雲と共に、消えてしまったという。


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