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2016/11/04

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第17回 韓国の若者雇用⑧「雇用政策の不振」                                                    駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

◆雇用のミスマッチが大きな要因に◆

 前回まで数回にわたり、韓国における若者の受験浪人、失業者、非正規労働者、無業者の現状について紹介してきた。今回、政府の若者に対する就労支援対策とその問題点についてふれていく。

 朴槿惠政権は出帆後6回にわたり、青年雇用対策を発表した。青年雇用対策の主たる事業としては、企業が就業希望者を採用して理論や実務教育を提供することで職務遂行能力を習得させようとする「仕事学習並行制度」、未就業者に対する「中小企業青年就業インターン制」、海外就業を支援する事業である「K-Move」などがある。

 2015年7月に政府が発表した「青年雇用絶壁解消総合対策」では、公共・民間の新規採用、海外への就業、中小企業インターン、有望・成長職種への職業訓練、仕事学習並行制度等によって若者20万人の雇用創出が目標に掲げられている。

 しかし、政府による若者雇用支援対策の効果は極めて限られている。第一に、政府の雇用支援対策を受ける若者が少ない。

 統計庁が2016年5月に実施した「経済活動人口調査(青年層付加調査)」によると、職業訓練を受けた15~29歳の若者のうち職業訓練を受けた主な場所は「私設学院」が58・6%と半数を超える半面、公共団体運営訓練機関は10・8%、職業能力開発訓練法人は11・3%と低い。

 第二に、若者雇用支援対策の成果が低い水準にとどまっている。

 企画財政部・韓国雇用情報院が2015年12月に発表した「青年雇用対策履行事項モニタリング及び実効性向上方案」によると、政府の青年雇用対策への参加者のうち就業できた者の割合は26・4%にすぎず、うち正規職への就業者は56・8%であった。

 つまり、青年雇用対策参加者のうち正規職に就職できた者(15~34歳)の割合は15%程度に過ぎなかったのである。

 第三に、若者雇用支援対策を通じた就業先の労働条件が悪い点である。

 韓国における若者雇用問題の一因として、雇用のミスマッチが挙げられる。政府による若者雇用支援対策に参加している企業の大半は中小企業であることから、政府のプログラムへの参加を通じて就業した若者の就職先も中小企業が多い。

 同報告書によると、若年雇用支援対策を通じて就業した若者の月平均賃金は150~200万㌆が43・1%、100~150万㌆が32・7%と低い水準に止まっており、劣悪な労働条件に対する不満の声が多い。

 若者は、政府の就労支援プログラムを受けても正社員への就職が困難であり、就職できたとしても劣悪な労働条件に耐えられずに早期離職する者が多い。

 そのため、若者たちが公務員や大企業のみを志望する傾向は根強く続いており、政府による若者就労支援の効果は低いのが現状である。

 今年に入り、政府・地方自治体による若者支援策として所得支援が行われるようになった。

 第一に、政府が2016年4月に発表した「青年・女性就業連携強化方案」では青年インターン制度への参加を通じて中小企業の正社員として就職した若者が2年間300万㌆を貯蓄すれば、政府が600万㌆、企業が300万㌆を支援して最大1200万㌆の財産を形成できる「青年就業明日共済制」が導入されている。

 この制度は、中小企業インターンシップへの参加誘導や、中小企業に就職した若者に対する所得面での支援、早期離職の抑制を図るものである。


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