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2016/10/28

<トピックス>私の日韓経済比較論 第66回 苦戦続く韓国企業                                                   大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆世界景気回復傾向でマイナスをカバーへ◆

 最近、韓国企業に関しては悪いニュースを聞く機会が増えた。その筆頭格はサムスン電子の新型スマホの販売中止であろう。

 サムスン電子は8月に「ギャラクシーノート7」を発売したが、ほどなく発火事故が報告されるようになった。9月にはリコールを発表したが、交換後の製品の発火も報告され、ついに10月11日、販売中止を公表するに至った。

 ほかにも、9月26日に現代自動車が全面ストライキを行い、国内の全工場の稼働が止まった。現代自動車でストライキは珍しくないが、全面ストライキは12年振りであり、激化する労使対立の象徴的な出来事としてとらえられた。

 企業のツートップともいえるサムスン電子と現代自動車のみならず、韓進海運の破綻、造船業界の構造問題など、韓国では企業に関する良くないニュースには事欠かない。

 9月の輸出額は、スマホのリコールの影響により携帯電話が前年同月比で27・9%減、自動車がストの影響により24・0%減となり、全体では5・9%減少した。輸出の前年同月比は2016年1月を底に、減少幅が縮小傾向にあり、8月には20カ月振りに増加に転じたところであったが、9月には再び減少に戻り、企業の悪いニュースが実体経済の指標に表れた形となった。

 韓国経済は本調子ではないものの景気は緩やかに回復している。しかし、サムスン電子の新型スマホ販売中止、現代自動車の全面スト、韓進海運の破綻などは韓国の景気に打撃を与え、これをきっかけに景気が後退してしまうのであろうか。筆者は、韓国の景気はこれら企業の問題にそれほど大きな影響を受けず、逆に回復傾向が強まると考えている。

 現代自動車の全面ストは韓国の労働組合の先鋭化という意味では象徴的な出来事ではあるが、ストが終了すれば生産・出荷も回復するわけであり、景気に与える影響は一時的である。

 新型スマホの販売中止は、サムスン電子の利益面で影響が長続きする可能性は否めない。ただし景気に与える影響はそれほど大きくないと考えられる。そもそもスマホは、韓国で生産している付加価値がそれほど大きくない。重要な部品は海外からの輸入でまかなっており、組み立ては韓国でも一部行われているが、かなりの部分がベトナムなど新興国で行われている。「ギャラクシーノート7」もその例外ではない。

 言い換えれば、韓国を代表する製品であっても、韓国で生産される付加価値が占める割合がそれほど大きくなく、景気に対する寄与は小さい。よって、スマホの発火事故で三星電子のブランドイメージが損なわれ、しばらくスマホが売れなくなったとしても、韓国の景気に与える影響はそれほど大きくないと見込まれる。


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