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2017/04/07

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第22回 韓国の労使関係⑤「労働協約と雇用世襲」                                                    駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

  • 韓国労働社会の二極化 第22回 韓国の労使関係⑤「労働協約と雇用世襲」

◆労働協約の適用、9割が受けられず◆

 前回は韓国の賃金交渉についてふれたが、団体交渉においては賃金のみならず労働条件に関する広範な事項について労使間で話し合われ、その合意内容が労働協約に反映される。

 今回は労働協約について近年社会的に注目を浴びている「雇用世襲」(組合の推薦により組合員の子息等が優先的に雇用される慣行)の問題に関連させながら紹介する。

 韓国の労働協約適用率(労働者全体のうち労働協約が適用される労働者が占める割合)は11・7%にすぎず、ヨーロッパ諸国に比べると大幅に低い(表参照)。

 すなわち、韓国においては9割弱の労働者が労働協約の適用を受けることができないことを意味する。

 韓国の労働協約適用率が顕著に低い主因としては、労働協約が企業・事業場単位で締結されることが挙げられる。

 労働協約には「一般的拘束力」という概念があり、組合員でなくても一定の要件が満たされれば労働協約が適用される。ヨーロッパの先進諸国では組合員・非組合員を問わず一般的拘束力によって産業別労働協約が適用されるために労働協約適用率が高くなる。

 労働協約の適用対象が産業全体に拡がり、労働条件が企業横断的に決定されるため、企業規模や雇用形態等による賃金格差を抑制する効果が存在する。

 他方、日本と同様に韓国の団体交渉は企業別単位が中心であり、労働協約の適用範囲も企業内に限定されることから労働組合に組織されていない企業の労働者は労働協約の恩恵を受けることができない。

 雇用労働部の「全国労働組合組織現況」によると、2013年の労働組合組織率は10・5%である。同年の労働協約適用率(11・7%)は労働組合組織率を1㌽しか上回っていない。

 したがって、韓国における労働協約の適用を受ける労働者は労働組合が存在する企業の組合員に止まっており、非組合員への労働協約の拡張は極めて制限的であることがわかる。ナショナルセンターが組合産別化や産業別交渉の推進を重点課題として掲げている一つの理由は、産業別労働協約を実現して二極化問題を改善することである。

 近年の社会的イシューとなっている雇用世襲は、実は労働協約に関わる問題である。雇用労働部は「団体協約実態調査結果」(2016年3月28日報道資料)にて、組合がある従業員100名以上の事業体2769カ所に対する労働協約の実態調査を発表した。

 同資料によると、組合推薦による優先・特別採用、組合運営費援助、唯一交渉団体条項などが含まれる労働協約が1165カ所(全体の42・1%)存在する。

 なかでも組合推薦による優先・特別採用は694件(全体の25・1%)であり、業務上の事故・疾病・死亡者の子息や非扶養家族を対象にしている事例が505件、定年退職者の子息や非扶養家族を対象にしている事例が442件発生している。


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