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2017/08/04

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第26回 文政権の労働政策の展望③「雇用創出②」                                                   駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

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 大統領選挙では若者の雇用問題が主要争点の一つとなった。

 韓国統計庁の「経済活動人口調査」によると、2017年6月時点の若年層(15~29歳)の失業率は10・5%を記録するなど、失業率は高止まりの状態が続いている。

 また、失業率には反映されない未就業者や非正規職の問題なども含めると、不安定雇用に苦しむ若者の規模はかなり大きい。就職難に悩む若年層は文在寅政権による若者支援政策に強い期待を抱いている。

 今回は、①青年雇用義務割当制、②中小企業の追加雇用支援制度、③青年求職促進手当を中心に文在寅政権の若者雇用政策について検討したい。

 文在寅氏は大統領選挙の公約で2020年までの3年間青年雇用義務割当制を強化することを掲げ、公共部門については現行3%を5%に拡大し、民間の大企業について従業員規模に応じて割当率(300人以上3%、500人以上4%、1000人以上5%)を新設するとした(共に民主党『第19代大統領選挙公約集』)。

 政府は公共部門の青年雇用義務割当率を5%に引き上げるために公共機関の定員と予算を大幅に引き上げる予定である(インターネット朝鮮日報2017年7月4日記事)。

 韓国労働社会研究所が2017年3月に発表した「公共機関青年雇用割当の実態と青年新規雇用創出分析」によると、2015年時点で青年雇用義務割当率を遵守していない公共機関が24・6%存在している。

 政府が公共機関の定員と予算を拡大できれば、青年雇用義務割当率を守れない公共機関は減少し、一定の雇用創出効果が期待できるであろう。

 一方、文在寅政権は、民間企業に対しては青年雇用義務割当率の新設までは踏み込まず、新規採用に対するインセンティブを検討する段階に止まっている(インターネット連合ニュース、2017年7月19日記事)。

 公共部門の場合とは異なり、民間企業に対しては政府が予算編成や採用人数枠について直接介入できないため、割当率の新設に向けた制度設計が容易ではないだろう。

 もし青年雇用義務割当率を民間大企業に遵守させるようなインセンティブやペナルティーが具備されれば、雇用創出効果は大きいであろう。しかし、民間大企業が人件費の上昇を最低限に抑えながら青年雇用義務割当率の達成を目指す可能性も高く、従来の正社員の待遇とはかけ離れた低賃金無期契約職を大幅に採用することが懸念される。

 大統領選挙の公約では、中小企業が若者を3人正規職で採用する場合に3人目の採用職員の賃金全額(3年間、年2000万㌆が上限)を支援することが掲げられた(共に民主党『第19代大統領選挙公約集』)。

 大企業に対して青年雇用義務割当率を新設しようとした半面、中小企業には「3人目」を基準にインセンティブを与えていることが特徴的である。

 文在寅政権発足後、


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