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2017/08/25

<トピックス>私の日韓経済比較論 第73回 最低賃金の引き上げ                                                   大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆賃金格差の縮小目指す、雇用減少の懸念も◆

 文在寅政権は去る7月に「国政運営5カ年計画」を公表した。ここには、2022年までに公共部門での働き口を81万人分創出、非正規労働者の使用理由制限の導入推進、前政権が導入した2大指針(公正人事指針および就業規則指針)など、選挙公約に盛り込まれた政策が盛り込まれている。

 計画には、2020年に最低賃金を1万㌆に引き上げることも盛り込まれているが、7月15日に雇用労働部は、その第一歩ともなる2018年に適用される最低賃金の大幅引き上げを公表した。

 18年の最低賃金は6470㌆となり前年からの引上率は16・4%である。そして計画どおり2020年までに1万㌦にするためには、19年および20年の引上率をそれぞれ15・2%とする必要があり、文在寅政権の最初の3年間における最低賃金引上率の平均値は15・6%となる。

 ちなみに韓国開発研究院(KDI)の経済見通しは、18年の消費者物価指数の上昇率を1・5%としているので、これを20年まで横置きすれば、文在寅政権の最初の3年間における最低賃金の実質引上率は14・4%となる。

 最低賃金の実質引上率を歴代政権と比較してみよう。文在寅政権を除けば、盧泰愚政権の9・4%が最高である。同政権の名目引上率は16・3%であるが、消費者物価指数の上昇率が6・9%と高かったため、実質的な引上率は10%を切る。これに続くのが廬武鉉政権の7・5%であり、朴槿惠政権の6・2%、金大中政権の5・1%、金泳三政権および李明博政権の2・6%が続く。よってもし20年までに最低賃金を1万㌆まで引き上げるならば、実質値で見る限り文在寅政権の引上率が際立つこととなる。

 また18年の最低賃金である7530㌆を韓国銀行データベースより得られる7月の平均レートにより円に換算すれば747円となる。ちなみに韓国の最低賃金は全国一律、日本は都道府県によって異なるが、18年の韓国の最低賃金より現在の最低賃金が低い都道府県は18県である。そして17年10月には日本の最低賃金が引き上げられるのでこの数はさらに減少する。しかし、20年に1万㌆にまで高まれば事情は異なってくる。7月27日に厚生労働省より「平成29年度地域別最低賃金額改正の目安について」が公表され、都道府県のランク別に26~22円の引上げの目安が示され、17年10月から都道府県の最低賃金がこの目安を反映して引き上げられる。そこで大胆な仮定ではあるが、①日本における引き上げが20年まで続く②為替レートが一定で推移するならば、20年10月以降の最低賃金が韓国より高い都道府県は、東京都と神奈川県だけになってしまう。

 文在寅政権が最低賃金をここまで引き上げる目的は、


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