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2018/01/12

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第31回 長時間労働③「過労文化とカカオトーク」                                                   駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

◆勤務時間外に業務強制させない対策を◆

 韓国の長時間労働は、高度成長期から現在まで根強く存在する社会問題である。

 企業においては、成長至上主義のもと経営成果を出すために、従業員の生活を犠牲にさせても長時間労働を強いる組織風土が醸成された。

 労働者もまた、家族を経済的に守るために長時間労働を甘受してきたのも事実であった。

 韓国が先進国入りしてからワークライフバランスを求める声が強まっているものの、長時間労働を是認する組織風土は根強く存在する。

 また、ITの発達に伴うスマートフォンの普及は新たな形態の長時間労働を生み出している。今回は「過労文化」ともいえる韓国企業の組織風土について紹介する。

 就業ポータルサイトである「サラムイン」の報道資料(2017年7月17日)によると、サラリーマン1486人を対象に残業実態調査を行ったところ、応答者の78・9%が残業を行い、平均週4回残業を行っている。残業を行う理由としては「業務がとても多いから」が56・2%、「業務の特性上仕方なく」が38・7%、「残業を強要する雰囲気だから」が30・3%、「業務分担がうまくいかず」が27・9%、「退社時間に切迫した業務要請が多いから」が24.3%、「上司が退社しないと退社できないため」が23・6%であった。

 この結果から、韓国の労働社会における問題点がいくつか浮かび上がってくる。第一に、正社員の不足である。業務量の過多、業務分担の不具合、業務上の特性に関する問題は社員が十分にいればある程度改善されうる問題である。

 しかし、企業は人件費の問題等により人手不足を解消できるほどの採用を行わないことも多い。したがって、若者の雇用問題は改善されないのは、既存の正社員の長時間労働が改善されないことも一因になっているといえよう。

 第二に、韓国企業の組織風土である。経営成果が重視される企業環境では、社員に犠牲を強要してでも目標を達成しなければならないと考える経営者や管理職は多い。その場合、職場では自ずと残業を強要する雰囲気が形成されていく。そしてこれは年功序列の文化と相まって「長く働く部下は頑張っている」と評価されがちである。

 部下にとっては、上司との関係の悪化が懸念されうるため、残業している上司よりも先に帰宅しづらくなる。したがって、サラリーマンは家族を犠牲にしてでも長時間労働を甘受せざるをえなくなる。これはまさしく「過労文化」といえるであろう。

 韓国の過労文化はITの発達により新たな長時間労働問題を生み出している。

 韓国労働研究院のイ・ギョンフィとキム・ギソンが2015年に発表した研究報告書「スマート機器の使用が勤労者の仕事と生活に与える影響」によると、


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