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2018/02/09

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第32回 長時間労働④「長時間労働の悪影響」                                                   駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

◆労働者のメンタルヘルス悪化、発病も◆

 前回のコラムでは、韓国の企業社会におけるいわば「過労文化」によって長時間労働が当然視される風潮により、サラリーマンは一日中業務から離れられないような生活環境にあることを紹介した。他方、韓国社会において生活の質の向上を求める声が強まるなか、長時間労働がもたらす副作用について社会的関心が高まっている。

 長時間労働は、労働者のメンタルヘルスの悪化や発病だけでなく、企業や国家の競争力にも悪影響を及ぼす。本稿では、長時間労働の悪影響について、韓国の事例を紹介したい。

 ①労働者の健康悪化

 まず、長時間労働によってストレスが蓄積するため、メンタルヘルスが悪化する。オンライン中央日報2017年6月12日記事によると、江北三星病院企業精神健康研究所が週40時間以上労働者1575人を対象に分析を行ったところ、週40~50時間働く労働者に比べて週51~55時間働く労働者のメンタルヘルスがよりひどく(憂鬱26・4%、不安28・8%、バーンアウト17・9%、ストレス6・3%)、週56時間以上働く労働者はさらにメンタルヘルスが悪化している(憂鬱34・0%、不安47・0%、バーンアウト28・6%、ストレス13・8%)。

 メンタルヘルスの悪化は鬱病をもたらし、鬱病の悪化は自殺につながる危険性もある。インターネット京郷新聞2017年5月25日記事によると、民主労総と市民社会団体が設立した無料労働不当解雇センターがゲーム産業の労働者620名を対象に調査を行った。

 その結果、平均52時間以上働く労働者は40時間働く労働者より鬱病の症状の危険度が2倍以上高く、60時間以上働く労働者のうち自殺を考えたことがある者の割合は40時間働く労働者における割合よりも2・8倍ほど高いことが明らかにされた。

 また、長時間労働は身体面でも健康の悪化をもたらし、脳・心筋疾患やがんなどの発生率を高める原因になる。洪潤哲・ソウル大学校教授の研究チームが平均40代中盤の会社員8535人を対象に行った調査によると、週30~40時間働く労働者に比べて、週61~70時間働く労働者は1・4倍、週71~80時間働く労働者は1・6倍、週80時間以上働く労働者は2倍、それぞれ心血管疾患の発生の危険が高いことがわかった(ソウル大学病院、病院ニュース、2014年10月7日)。

 ②労働生産性の低下

 長時間労働による労働者の心身面の健康の悪化は企業経営にも悪影響を及ぼす。度重なる残業や休日出勤は社員の業務処理速度を低下させたり、ミスを増加させたりするなど生産効率を低下させる。その結果、


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