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2018/07/06

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第37回 賃金問題②「最低賃金(前編)」                                                   駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

  • 韓国労働社会の二極化 第37回 賃金問題②「最低賃金(前編)」

◆大幅引上げが雇用削減につながる危険性◆

 文在寅氏は、大統領選挙当時から最低賃金を1万㌆にすることを公約に掲げ、政権発足後に最低賃金の大幅引上げが実行された。そして文在寅政権による最低賃金の大幅引上げが世論を二分している。

 賛成派は、最低賃金の大幅引上げが低賃金労働者の生活改善と賃金格差の是正に効果があることを強調する。これに対し反対派は、最低賃金の大幅引上げによって人件費が上昇し、経営状態の悪化と雇用削減等の副作用をもたらすと主張している。

 韓国の最低賃金は先進国と比較してどのような水準にあるのか?

 また、文在寅政権に入ってから最低賃金の上昇幅はどの程度であろうか?今回はこれらを中心に韓国における最低賃金の水準について検討を行う。

 表1は、先進国の最低賃金に関連する統計をまとめたものである。まず、最低賃金額は物価水準の影響を受けるため、購買力平価で調整した実質最低賃金で比較を行う。

 韓国の実質最低賃金(時間給)は5・8㌦であり、表1のなかでは最も低い水準である。つまり、韓国の最低賃金水準は先進国の中では決して高くないことがわかる。次に、最低賃金の相対的水準を分析するための指標として中位賃金(フルタイム労働者の賃金の中央値)に対する最低賃金の割合がある。これは、割合が高いほど、中位賃金労働者と最低賃金労働者との賃金格差が低いことを意味する。

 韓国は50・4%であり、表1のなかではフランス(60・5%)に次いで高い水準である。つまり韓国は、中位賃金労働者と最低賃金労働者との賃金格差が先進国のなかでは小さいということになる。

 しかし注意しなければならない点は、中位賃金労働者と最低賃金労働者との賃金格差が小さいことは、低賃金労働者の割合が低いことを意味するわけではないという点である。

 OECD統計によると、2016年時点の低賃金労働者(中位賃金の3分の2未満)の割合は、韓国が23・5%であり、数値が発表されているOECD加盟国の中ではアメリカ(24・9%)の次に高い。このように低賃金労働者の割合が高い韓国では、最低賃金を引上げると、その影響を受ける労働者の数も多く、企業経営やマクロ経済に与えるインパクトも大きいのである。

 表2(図表は本紙へ)は、韓国の最低賃金額(時間給)を年度別にまとめたものである。まず最低賃金は、2013年が4860㌆であったのに対し、2014年に5000㌆台(5210㌆)、2016年に6000㌆台(6030㌆)、2018年に7000㌆台(7530㌆)を突破している。2018年の最低賃金額は5年前である2013年の約1・5倍に達している。

 次に最低賃金引上率であるが、朴槿惠政権の時期においては6~8%台を推移しているのに対し、文在寅政権に入ってから初めて設定された年度である2018年は16・4%まで大幅に上昇している。近年の実質GDP成長率が


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