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2019/01/18

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第96回 1969年第2次経済開発5カ年計画                                                          郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に見るソウルと韓国 第96回 1969年第2次経済開発5カ年計画

           「第2次経済開発」のキャンペーン切手(1969年)

◆「勤勉貯蓄」呼びかけ、ブタの貯金箱の記念印に◆

 いまさら「おめでとうございます」とは言いづらい日付になってしまったが、ともかくも年が明けてから最初の本連載ということで、今回は干支にちなんだ話題にしよう。

 日本では亥年の動物はイノシシだが、朝鮮半島では、中国同様、ブタである。朝鮮半島の伝統祭祀では神への供物としてはブタが用いられるが、あわせて、ブタには神意を人々に伝え、物事を決定させる神通力があるとも考えられてきた。

 たとえば、高麗王朝を開いた太祖(在位918~43)の祖父、作帝健は西海龍王を悩ませていた老狐を退治し、その褒美として龍王の娘とブタを得たが、故郷に連れて帰ったブタは小屋に入ろうとしなかった。そこで、ブタを放ち、松岳の南麓に落ち着いたが、ここが、孫の代になって高麗王朝の都、開城の元になったという。

 また、漢字〝豚〟の朝鮮語音〝トン〟が金銭を意味する〝トン〟と同音であること、ブタは多産であることから、家に財産や福をもたらす守護神もしくは商売繁盛の財神ともみなされ、夢にブタが出てくるのは「福が来る」、「食べ物を得る」などの吉祥の暗示とされている。こうしたこともあって、商人の間では、新たな事業を起こすのは、陰暦正月の最初の亥の日(2019年は、2月5日が陰暦元日なので、7日の乙亥の日がそれにあたる)が良いとの俗信もある。1969年に発行された〝第2次経済開発〟のキャンペーン切手が発行された際に使用された記念印に、ブタの貯金箱が描かれているのも、そうした事情を踏まえてのことだろう。

 1965年、日本との国交正常化により、日本から総額8億㌦(無償3億㌦、政府借款2億㌦、民間借款3億㌦)の資金援助を得た韓国政府は、1967年、第2次経済開発5カ年計画を発動する。

 同計画の目玉のひとつは高速道路建設で、1968年には、ソウル=仁川間を結ぶ24㌔の京仁高速道路が開通。以後、〝全国の1日生活圏化(全国を1日で往復できるようにする)〟を目標として、1970年6月にはソウルと釜山を結ぶ京釜高速道路も開通した。切手の右上にも、歯車の中に高速道路のイメージが描かれている。

 切手の下部は貯金の窓口が描かれており、経済成長によって豊かになった国民に対して〝勤勉貯蓄〟に励むよう呼びかけるデザインになっている。

 ブタの貯金箱と工場を組み合わせた記念印のデザインも、国民の貯蓄が韓国の金融を強くし、産業建設につながるというイメージを表現したのだろう。

 ところで、


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