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2020/05/22

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第112回 金首露王とサータヴァーハナ朝の王女                                                 郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 切手に見るソウルと韓国 第112回 金首露王とサータヴァーハナ朝の王女                                                 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究

  • 切手に見るソウルと韓国 第112回 金首露王とサータヴァーハナ朝の王女                                                 郵便学者 内藤 陽介 氏

    昨年、韓国とインドで許黄玉を題材に、両国友好をアピールする切手が同時発行された(韓国)

  • 切手に見るソウルと韓国 第112回 金首露王とサータヴァーハナ朝の王女                                                 郵便学者 内藤 陽介 氏

    両国友好をアピールする同時発行された切手(インド)

 今月7日、インド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州ヴィシャーカパトナムにある韓国LG科学の現地法人、LGポリマーズ・インディアの工場で有害物質のスチレンガスが流出する事故が発生。ガスは数キロ先まで拡散し、近隣住民ら少なくとも13人が死亡したほか、約1000人が目の焼けるような感覚と呼吸困難、嘔吐などの症状を訴えて入院した。

 事故の起きたヴィシャーカパトナムはベンガル湾に面した港湾都市で、コンテナターミナルのほか、インドの潜水艦訓練施設としては最高峰のINSサータヴァーハナがあることでも知られている。INSサータヴァーハナの名前は、紀元前3世紀から紀元後3世紀にかけて中央インドの広い範囲を支配し、ローマ帝国と盛んに海上交易を行った王朝、サータヴァーハナ朝に由来するものだが、この王朝は韓国とも因縁浅からぬものがある。

 韓国最大の氏族である金海金氏は、駕洛国(金官伽倻)の王・首露王とされているが、その妃として王との間に10人の息子をもうけたとされる許黄玉(ホファンオク)は、もともと、阿諭陀国と呼ばれていたサータヴァーハナ朝の王女だったと伝えられている。ちなみに、金海許氏は、許黄玉の産んだ10人の王子の内、許の姓を与えられた2人を起源と主張している。なお、インド出身の彼女が許と呼ばれているのは、インドの神殿に仕える巫師の職名“フォ”を音訳したものと考えられている。


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