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2003/07/04

<鳳仙花>◆サムスンの「天才経営論」◆

 サムスングループの李健熙会長の「天才経営論」が強い関心を集め、韓国の有力各紙がその天才経営戦略の内容と背景を探ろうとシリーズで取り上げている。

 この天才経営論は、「21世紀は人間の頭で戦う頭脳戦争時代」という認識のもと、中国の急速な追い上げも念頭におき、「5年10年後に何で食べて行くのか。未来が保障された先端事業を発掘して育てなければならない。そのためには天才級の頭脳が必要だ」というものだ。一見単純にみえるが、これは単なる思いつきレベルのものではない。すでに2年前から「準天才級人材」を国内外から500人ほど集めており、住居、乗用車の提供はもちろん、給与も社長並みの高給という。

 10年前、李会長は「新経営宣言」を打ち出し、「妻と子ども以外はすべて変えろ」と意識革命を促した。米国出張の際、ロサンゼルスの商店で、NECなど日本の電子製品が陳列台の正面に置かれていたが、サムスン製品は片隅にあるのを見て強いショックを受け、現状のままではサムスンは二流三流の企業にとどまるとの危機感をもった。

 それを一大改革に結びつけたのはやはり「一流以外は生き残れない」という理念、「日本より土地も狭く市場も小さく資本も少ないわれわれの唯一の競争力は人材だ」という強い信念があったからだろう。当時、景気はよくサムスンの業績も悪くはなかったが、そこに安住しなかった。

 もともとサムスンは人材育成には定評がある。20年近く前のことだが、入社したてのサムスンマンと話したことがある。彼は、「給料は出すから1年間、好きなことをやってこい」と言われ、勉強をかねて日本にきたのだという。人材育成にかけるサムスンの徹底ぶりを思わせるエピソードだ。「人材の韓国」のモデルケースとして注目したい。(S)