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2003/03/14

<鳳仙花>◆韓国の分配政策◆

 かつて英国のサッチャー政権は、瀕死の経済を立て直したが、貧富の格差を生み出し、その結果犯罪を何倍にも増やした。逆に貧富の格差が少ない国ほど犯罪発生率は少なく、日本はその優等生だ。

 庶民派大統領として登場した韓国の盧武鉉政権は分配正義を掲げており、貧富の格差是正が最優先課題になると見られている。単純化して言えば、金持ちにはより多くの税金を課し、貧しき者に福祉などで富を分配しようというものだ。

 このような分配重視に対しては「大衆の人気に迎合するポピュリズムだ」という批判も一部であるが、企業経営者はどうみているだろうか。最近、韓国の有力経済専門誌「エコノミスト」が国内100大企業のCEO(最高経営責任者)を対象に世論調査を実施した。この中で、回答者の76・2%が「成長と分配の均衡」を願い、分配中心に偏ることを警戒した。だが、成長中心政策をとるべきだという回答も23・8%にすぎない。また、「財閥の所有・支配構造の公開」に対しては40・5%が賛成し、反対は16・7%にとどまった。さらに相続・贈与税の完全包括主義を導入し、財閥一家の脱法的な財産世襲を防ぐという政府政策に59・5%が中立の立場をとった。「オーナー個人には良くなくても会社のためには良いこと」と認識していることを示すものだろう。

 韓国社会は急速に変化している。これまで「分配より成長だ」という掛け声が強かった。だが、いまは時代も社会も所得水準も違っている。社会が豊かになり絶対多数の幸せが守られれば犯罪も起きにくくなるはずだ。エコノミスト調査結果にも表れているが、分配に関する限り国民的コンセンサスはあるとみていい。問題は摩擦のない政策の舵取りにかかっているように思える。(S)