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2004/11/19

<鳳仙花>◆高円宮殿下が見た韓国◆

 皇族初の韓国訪問記「高円宮殿下が見た韓国」が完成した。21日から全国の書店で販売される。発売前から韓日双方のメディアも関心が高く、どんな反響があるのか製作側としては緊張しながら見守っている。

 この本は、小紙で1年余にわたり計40回連載した「故高円宮殿下が見た韓国」を一部加筆修正もの。カメラ好きの殿下が韓国各地の訪問先で撮られた写真に、その一枚一枚の写真にまつわる思い出や人々との触れ合いの様子を妃殿下がペンで綴られている。皇族の韓国観を知る上でも格好の書だと考える。

 日本の皇族が韓国政府の正式招待を受け訪韓したことは過去一度もなかった。そのきっかけを与えてくれたのは韓日が共催した2002年サッカーワールドカップ大会だった。当初、韓日双方とも単独開催をめざしていたが、誘致合戦が過熱化、このままではしこりが大きすぎると判断され、共催論が浮上した。その時、日本サッカー協会の名誉総裁でもあった高円宮殿下は、両国関係を将来に向けて築き上げていくチャンスと前向きにとらえた。

 この韓日関係の発展は、本書の最大のテーマであるといえ、妃殿下は連載を終え「殿下が心から願っていた日韓友好親善のため少しでも役立てればと思い一生懸命になった」としみじみ述懐された。

 5泊6日の短期間の滞在だったが、両殿下は実に精力的に行動された。釜山ではチャガルチ市場を1時間かけて見て回り、人々と触れ合い、談笑の輪が広がった。釜山タワー下の李舜臣将軍の銅像前で記念写真を撮り、海戦で豊臣秀吉軍を撃破した「秘密」にまで踏み込んで叙述するなど、多彩な見聞録になっている。

 高円宮殿下は訪韓最後の記者会見で「近くて遠い国が、近くて遠くない国になった」と述べられたが、妃殿下はこの言葉を振り返りながら、「これから近くて近い国になるようしっかり前進していくのは私たち一人ひとりに与えられた責務」と述べられている。本書を読めば、殿下が再三強調された「交流を積み重ね絆を深めることが何よりも大事」であるとの思いが伝わってくる。(S)