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2004/07/16

<鳳仙花>◆甦る古代国家「高句麗」◆

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に北朝鮮の高句麗壁画古墳群が登録された。中国の「高句麗の古代都市や皇族と貴族の古墳群」も同時に世界遺産に登録され、幻の古代国家「高句麗」が世界的に脚光を浴びる契機になると期待される。

 世界遺産は、ユネスコが世界中の国や民族が誇る文化財や自然環境を保護し、未来の世代に受け継いでいくため、1972年に制定したもので、これまでに計788件が登録されている。

 高句麗は、紀元前1世紀後半に起こり、唐と新羅の連合軍によって668年に滅ぶまで、約700年間にわたって栄えた古代国家で、その版図は中国東北部から韓半島、ロシア沿海州にまでおよんだ。今回登録された北朝鮮側遺跡は、平壌や南浦にある古墳63基で、そのうち16基は壁画古墳として名高い。

 壁画は、4神図(玄武、朱雀、青龍、白虎)やきらびやかな衣装をまとった貴婦人像、すもうの原型を思わせる格闘図などさまざまで、その鮮やかな色彩は約2千年の時を経たものとは信じ難い。これらの絵は、当時の風俗、信仰などを伝える貴重な史料で、高句麗の文化水準の高さに度肝を抜かれる。

 高句麗古墳群は、奈良の高松塚古墳やキトラ古墳との類似点が指摘されており、高松塚の「飛鳥美人」は「高句麗美人」とそっくりで、4神図も共通している。これは、高句麗と古代日本の間に密接な交流があったことを示すもので、古代史のロマンがかきたてられる。

 世界遺産に登録されたことで、北朝鮮には高句麗古墳群を整備・保護する義務が生じる。日本は世界トップレベルの史跡の補修・復元技術をもっており、協力することが可能だろう。これを機に、高句麗研究を通じた北朝鮮と韓日中の交流が進むことにも期待したい。世界遺産は人類共通の宝であり、そこに国境はない。このすばらしい壁画古墳のドキュメンタリー映像の企画もあるという。ぜひ、世界の人々に接する機会をあたえてほしい。(G)