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2005/06/10

<鳳仙花>◆韓国社会の新たな胎動◆

 家事・育児は女性の仕事――。こういった考えが根強い韓国で、子育てパパの奮闘記が話題になるなど、この数年男女の価値観に大きな変化が見られる。これは世界一の猛スピードで進む少子高齢化の中で、韓国社会が新たな胎動を始めた兆候だと思われる。

 その変化はまず女性の結婚観に表れている。ソウルの結婚紹介所が未婚の専門職345人を対象にした調査結果によると、伴侶の第一条件は収入(30%)や知性(19%)ではなく、「家事分担をしてくれる男性」(51%)だった。「専業主婦」になった夫と会社で働く妻の話を扱ったドラマが人気を博していることをみても、女性の男性観は従来と明らかに変わってきている。

 一方で男性の伴侶選びにも変化が見られる。7000人の男性を対象にしたインターネット調査で、8割が「容姿より、金持ちで仕事のできる女性」と答えている。「武士は食わねど高楊枝」が徹底した韓国人男性とは信じられないような回答だ。これは、97年末の通貨危機以降の厳しかった経済事情が反映されたものと思われる。

 変化はこれだけではない。恐ろしいのは、女性の出産意欲が萎えているのではないかと思える点だ。保健社会研究院が昨年実施したアンケート調査で、「必ずしも子供を産む必要がない」と答えた女性が実に44・9%に達した。91年には8・5%だったのと比べ、この10余年間に何が起こったのか問い直してみる必要がありそうだ。韓国の女性の出産率が1・17人と極めて低いことを考えると問題は非常に深刻だ。

 韓国社会は、その家庭という基礎単位から大きな変化をし始めており、それに対する様々な角度からの対応が急がれる。韓国では4年前に中央政府に女性部を発足させたが、9月からは大統領直属の「低出産・高齢化委員会」を組織し、未来社会に備えるという。ぜひとも先進的に取り組み、日本など同じ問題に悩む国のモデルケースになってほしい。(O)