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2006/08/04

<鳳仙花>◆在日障害者の自立支援◆

 重い障害を持つ子どもを育てている在日の知人がいる。先日、同じ立場の家族が集まり、「NPO法人京都コリアン生活センターエルファ」(京都市左京区)を訪問した。

 人権運動に携わってきた大学教授や医療・福祉関係者など韓日の有志が、”在日コリアン障害者の生活支援”を掲げて2001年に立ち上げた団体で、2004年11月には共同作業所を設けた2階建ての会館をカンパで建てた。障害者自らがパンや韓国食品などの製造・販売を行い、自立の一助にしようと活動を続けている。在日障害者を対象としたこのような作業所は、ここが初めてという。

 障害者の子どもを持つ親にとって、子どもが学校を卒業した後の受け入れ先探しは重大事だ。そのためエルファセンターを見学に訪れる在日の親が、数多くいるという。

 在日障害者については、日本社会でも在日社会でも、まだまだ理解が足りない。まず無年金問題がある。国民年金制度ができた時、国籍条項を作って在日外国人を閉め出した。82年の法改正でやっと国籍条項は撤廃されたが、閉め出された人への救済処置を取ろうとはしなかった。

 その結果、当時20歳以上の障害者と、86年当時60歳以上の高齢者は制度加入を認められず、いまだに無年金状態におかれている。経済的困窮は自立の一番の妨げだ。

 在日社会を見ると、福祉行政の理解が不十分であったり、障害者を家族で抱えて、外に出すことを嫌う家庭もまだまだあるという。そのためエルファでは、障害者支援のネットワークづくりを呼びかけると同時に、看護師やボランティアの養成、無年金問題の是正にも取り組んでいる。

 日本では「障害者自立支援法」が昨年10月に成立したが、本人や家族の金銭的負担が増すだけとの指摘もある。

 真の自立支援とは何か。論議を深めると同時に、エルファのような地域密着の取り組みが全国に広がることを願う。(L)