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2007/06/01

<鳳仙花>◆財閥会長が起こした暴力事件◆

 子どものケンカに親がしゃしゃり出る――どこにでもよくある話だが、主人公が韓国を代表するような財閥のトップで、暴力団を使って報復していたとなると、よくある話ではすまされない。

 いま韓国社会は、ハンファグループの金升淵会長(キム・スンヨン、55)による暴力事件で揺れている。事の発端は、3月8日、金会長の二男がカラオケ店で客として来ていたナイトクラブの従業員とトラブルを起こし、殴られてけがをしたというものだ。これに腹を立てた金会長が、ボディガードや暴力団を動員して加害者らを拉致・監禁し、暴力を振るった容疑で逮捕された。

 金升淵会長は、ハンファ創業者の故金鍾喜氏の長男で、81年に父親が死去したのに伴い、29歳の若さで総帥となり、積極的なM&A(企業の合併・買収)でグループを拡大し、ハンファを財界10位圏内に押し上げた。金会長は保有株式評価額で4位(8734億ウォン)の財界の実力者だ。その半面、財力と権力をかさにきて、傍若無人の振る舞いも多かったという。

 しかも事件は思わぬ方向に飛び火した。警察が故意に捜査を遅らせたり、金会長関与の事実を隠蔽していた疑惑が明るみに出て、ソウル地方警察庁のトップが辞任、捜査を担当した警察幹部も更迭された。驚くべきことに、ハンファに天下りし、顧問を務めている崔圻文・元警察庁長が、現職の李宅淳・警察庁長をはじめ、捜査担当の幹部らに圧力をかけていたといわれる。社会正義を守るべき警察にあるまじき行為で、これでは、先進国とはとても言えまい。

 今回の事件は、一財閥の特異なケースではあるが、その背景には、巨大な権力が一人に集中する財閥の構造的問題があるのではないか。所有と経営が分離されていない財閥の支配構造のひずみである。事件の真相究明、再発防止はもちろんだが、警察は綱紀粛正を図り、財閥はこれを他山の石として襟を正さねばなるまい。(G)