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2008/11/28

<鳳仙花>◆内なる「国際化」の推進を◆

 「すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利について平等である」と主張した世界人権宣言が、1948年12月10日に国連総会で採択されてから今年で60周年を迎えた。潘基文・国連事務総長は、「今年を世界的な人権伸張の年にしたい」としたが、その道のりはまだ遠い。しかし、米国に初の黒人大統領が誕生するなど、人権が普遍化していることを実感させた。

 日本社会はどうだろうか。少子高齢化が進み、このままでは労働力不足の国家的危機に陥るとして、自民党有志の「外国人人材交流推進議員連盟」(会長・中川秀直元幹事長)が、「今後50年間で約1000万人の外国人移民受け入れを」と提言したのは、今年6月のことだ。同提言には賛否両論あるが、「人種差別撤廃条約に基づく『民族差別禁止法』の制定」「永住外国人の法的地位を安定させるための永住許可要件の大幅緩和」「日本国籍取得要件の緩和」などが盛り込まれていることは注目に値する。また経団連は「外国人材受け入れのため人権政策の早期導入」を提言しているが、外国人受け入れには「人権を尊重し、生きやすい環境をつくること」が不可欠だろう。

 外国籍者の人数は2007年末時点で215万2973人(韓国・朝鮮籍は59万3489人)になるが、在日外国人政策は追いついていない。これまで日本社会における在日外国人といえば在日コリアンだった。その意味で在日は日本の人権政策を映す鏡だった。40 年前、民族差別が原因で引き起こされたいわゆる「金嬉老事件」を振り返るドキュメンタリー番組が先日放映されたが、「日本社会に差別はなくなったのか」と問いかけるキャスターの言葉が印象的だった。

 移民受け入れのためにも、在日コリアンの経験を伝えることは重要だ。行政も在日の提言にこれまで以上に耳を傾け、「内なる国際化」を果敢に進めることが、より急がれるのではなかろうか。(L)