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2008/12/19

<鳳仙花>◆韓国人被爆者の癒されぬ傷◆

 先日、「韓国原爆被爆者協会」に所属する韓国人被爆者とその遺族計388人が、日本政府を相手に1人当たり120万円の慰謝料などを求めて提訴した。今後、他の被爆者や遺族にも呼びかけ、3000人規模の訴訟団になるという。

 戦後63年も経つのに、いまなお裁判とは――そこには戦後補償問題の根の深さがある。

 韓国人被爆者は長年、日本人被爆者のように健康管理手当てを受けることが出来なかった。抗議活動の末に受給が認められてからも、「日本国内に居住していることが条件で、日本を出国した場合には支給が打ち切られる」と74年に厚生省(当時)から通達が出されたのである。

 これに対し海外被爆者から批判が噴出し、裁判闘争にまでなった。その結果、2003年に通達は廃止されたが、その間の未払い手当てについては「時効」だとして、厚労省は支払いを拒否した。これについて最高裁が昨年、「通達は違法であった」という判決を出し、未払い期間の損害について慰謝料の支払いを命じたのである。

 しかし厚労省は、「海外在住被爆者が提訴して、裁判所が被爆者として認定した場合にのみ慰謝料を支給する」とした。韓国人被爆者は仕方なく、今回の集団訴訟に訴えざるを得なくなった。それにしても、一介の通達によって、受けるべき支給と治療が長年行われず、韓国人被爆者が長年苦しんできたことを考えると、理不尽にすぎる。

 韓国人被爆者は約7万人といわれる。そのうち約4万人が被爆直後に亡くなり、約2万3000人が祖国に帰り、約7000人が日本で生活している。補償も医療も受けられないまま長年捨て置かれてきたこと自体、人道にもとる。

 「日本政府は被爆者全員が亡くなるのを待っているのではないか」という、韓国人被爆者の怒りは当然だろう。韓日両政府で解決策を早急に講じてほしい。(L)