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2009/05/29

<鳳仙花>◆韓国の新5万ウォン紙幣考◆

 韓国で6月23日から新高額紙幣の5万ウォン札が発行される。現在の最高額紙幣である1万ウォン札が1973年に発行されてから36年ぶりのことで、いろいろと話題を呼んでいる。

 新5万ウォン札のデザインから見てみよう。表に良妻賢母の鑑とされる申師任堂(シンサイムダン)の肖像を描いた黄色系の色調で、 サイズは縦68㍉、横154㍉。1万ウォン札より横幅が6㍉大きい。まず紙幣に初めて女性である申師任堂を選んだということに注目したい。

 申師任堂(1504~51)は、朝鮮時代当時だけではなく現代においても見習うべき女性として、韓国では誰もが知っている歴史上の人物である。夫の科挙合格に尽くし、韓国有数の儒家となる栗谷(ユルゴク)を育て上げただけでなく、絵画と詩歌に秀でた才能を持ち、封建時代において独立した人間としての個を確立した女性であった。日本でも樋口一葉の肖像画が新5000円札に用いられ話題になったが、日本の韓国旅行者にとっても新師任堂を知るいい機会になるのではないか。

 さて、今回の新高額紙幣の発行は、1万ウォンが発行されてから36年で物価が12倍以上に上がり、国民所得も150倍以上に伸びるなど経済規模が拡大したにもかかわらず、最高額面は1万ウォンのままだったため、日常生活のさまざまな場面で不便が生じていることがある。

 例えば、韓国で一般的な昼飯代は5000ウォンで、最高額紙幣の半分を占めるが、日本では1万円の5割を占める昼食は一般的ではない。ともかく、決済手段が広がることで日常的な取り引きが便利になるメリットが大きい。その意味で時宜を得たものだろう。

 現在の貨幣発行残高は30兆ウォンで、 このうち1万ウォン札が26兆ウォンを占める主要紙幣だが、今後はその4割ほどが5万ウォンで代替される見通しだ。通常、新札発行はインフレ促進要因と考えられているが、発行元の韓国銀行では「5万ウォン札が招くインフレは無視できるほど小さいだけでなく、一時的な現象にとどまるだろう」と分析しているが、くれぐれも注意してほしいものだ。(S)