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2010/03/19

<鳳仙花>◆障害者スポーツが与える勇気◆

 バンクーバー冬季パラリンピックの熱戦が伝わっているが、韓国唯一の冬季パラリンピックメダル保持者は、アルペンチェアスキーのハン・サンミン選手(28)だ。下半身まひという重度の障害をかかえて生まれたが、「障害者だからと負けたくない」と、スキー競技にチャレンジした。その奮闘ぶりは、韓国の障害者スポーツのすそ野拡大につながった。今大会に韓国が過去最多の25人の選手を送り込めたのも、彼のチャレンジ精神に負うところが大きかったのではないか。

 ハン選手は高校1年生のときに韓国代表となり、以後13年間、その座にある。2002年ソルトレークパラリンピックで銀メダルを獲得し、今大会で再びメダルに挑んでいる。チェアスキーは、用具代だけで100万円近くかかる競技だ。障害者スポーツへの認知度が低く、練習施設も整っていなかった韓国で選手生活を続けるのは、大きな困難が伴ったことだろう。

 だが、努力は報われるものだ。そのハン選手を含む障害者スポーツ3選手が昨年、民間企業が設立した実業団障害者スキーチームの創設メンバーに選ばれた。「練習場所が確保できただけでもうれしいのに、給料までもらえるとは、どれだけ幸せなことだろう」と語るハン選手の言葉に、13年間の苦労がしのばれる。韓国社会の、障害者スポーツに対する意識変化を象徴する出来事といえるだろう。

 パラリンピックはスポーツの側面と障害者のリハビリ、健常者と障害者の共生という側面を持つ。単純にメダル数を競うものではないが、それでも必死にプレーする姿は、障害者だけでなく、多くの人を勇気付けてくれる。

 韓国には約100万人の障害者がいるといわれる。ハン選手は「将来は指導者として後輩を育て、社会の理解をさらに深めたい」と語ったが、パラリンピックを契機に、障害者問題、障害者スポーツにより多くの人が目を向けることを望みたい。(L)