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2011/07/01

<鳳仙花>◆「在日の記憶」伝える記念館再開◆

 在日1世の李貞鎬さんが1989年に建てた丹波マンガン記念館(京都)が、今月3日再開する。同館は約300㍍の坑道跡地に、厳しい鉱山労働を伝えるろう人形や採掘道具・資料などが展示され、当時ここで強制的に働かされた韓国人の厳しい現実を再現している。実際にここで労働に従事させられた李さんの、「不幸な歴史が2度と起こらないでほしい」との思いが伝わる「在日の記憶遺産」というべき記念館だ。

 ユネスコは「世界記憶遺産」事業を推進しており、最近では歴史書物の「日省録」(王の日記)や80年の5・18民主化運動記録物、福岡県筑豊の炭鉱労働を記録した絵師・山本作兵衛さんの炭鉱画が登録された。記憶遺産は人類の文化を受け継ぐ貴重な遺産として、保存の重要性が世界的に認識されつつある。

 丹波マンガン記念館もぜひ保存する必要があると思う。李さんが95年に亡くなった後、遺族が運営を引き継いだが、年間500万円の維持費が大きな負担で、09年5月末に一度は閉館した。しかし、閉館直後から在日、韓国、日本の有志による再建運動が起き、昨年6月に再建委員会が結成され、当面の補修と維持管理費として1000万円の募金を呼びかけた。すると、韓国の人気ロックバンド「ユン・ドヒョンバンド」がチャリティーコンサートを開いて協力、韓国内に再建推進委員会もできて、これまでに約1120万円が集まった。その資金をもとに今回の再開が決定した。国家や自治体の助けではなく、草の根の活動が大いに貢献したわけだ。 

 今後、運営をNPO法人主体にして、遺族の負担を減らし、また韓日の小中高生らの修学旅行コースに組み込んでもらうよう働きかけ、歴史を知ってもらうと同時に入館料収入を増やす計画という。

 韓日の文化交流は盛んになっているが、真の「未来志向」の関係を築くためには歴史の相互理解が欠かせない。再開する同館が、末永く続くことを願う。(L)