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2011/12/16

<鳳仙花>◆韓国経済の光と影◆

 今年を振り返ると、韓国経済の躍進が目立つ。まず貿易額が1兆㌦を突破した。世界9番目の快挙である。世界経済は厳しい環境にあるが、韓国製自動車が世界シェアを拡大、造船は中国から受注高世界一を奪還した。そして、現代の神器スマートフォン(高機能携帯電話)で韓国製が世界を席巻し、メイド・イン・コリアの存在感が一段と高まった。だが、その一方で韓国経済を支える勤労者の不満が鬱積している現実がある。就職難や物価高が直接的な原因だが、背景に所得格差の拡大という構造的問題が指摘されており、非正規職が600万人に急増した。今年は明暗のコントラストがはっきりした1年といえそうだ。

 この格差問題の解決の一環として政府が設置した協力成長委員会の鄭雲燦(チョン・ウンチャン)委員長は「韓国企業の強みはスピード経営と大胆な投資、ハングリー精神にある」と指摘した。経済学者ケインズの言う「失敗を恐れずに開拓するアニマル・スピリット(野心的精神)」も加えることができよう。

 ところで、少女歌手グループAKB48をプロデュースした秋元康氏は「今僕らが目にしているものは、すべて過去なんです。例えばこのカップを作ったのは何年か前。そこにコーヒーを入れたのも何分か前。何かやろうと思うなら、先のことをやらないと間に合わない」と述べている。

 先を見て戦略を立て、失敗を恐れず大胆に投資する。スマートフォンにも必須の現代の産業のコメ、半導体で韓国が成功したのもまさにこの精神だろう。

 今年はウォール街デモの「1%の富裕層が99%の持たざる者を支配する資本主義」が問われたように、所得格差は先進国でも世界的な傾向になっている。韓国も格差問題に手遅れになる前に根本的な対策が必要だろう。そのときになっては手遅れになる。

 10年前に果たして、韓国が貿易1兆㌦を達成し、自動車やスマートフォンが世界市場を席巻すると誰が想像できただろうか。今では韓国経済に学ぼうと言い出す人まででてきた。格差問題もしかり。積極的に取り組めば、解決できないものはないだろう。(S)