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2003/04/11

<在日社会>「韓半島に平和と安定を」在日学者ら訴え

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                      李 鍾元 氏

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                      姜 尚中 氏

 緊迫化する韓半島情勢、日本のナショナリズム台頭の懸念など、アジア情勢の変動を憂えて在日や日本の学者が相次いで本を出版、警鐘を鳴らしている。

 在日2世の立場から「日本」について鋭い批判と分析をつづけてきた姜尚中・東京大学社会情報研究所教授(写真:左)は、9・11米テロ事件、イラク戦争と世界が激動する中、東北アジアの地域的結びつきを深めるための提言として、「『日米関係』からの自立 9・11からイラク・北朝鮮危機まで」(藤原書店)、を、日本や韓国の学者とともに緊急出版した。

 姜教授は「日朝国交正常化交渉は単に日本と北朝鮮との2国間関係の正常化にとどまらず、南北朝鮮の平和的な共存と統一、さらには東北アジアの多国間主義的な協力関係の形成にとって決定的な第一歩になるはずだ」として、「アジアの平和にとって日本の役割が増大しているいま、早期に日朝交渉を進めて東北アジアに平和をもたらすことが重要」と提言、「東北アジア共同の家を実現し、この地域での新しい秩序を形成することは、米国に単独主義的行動への内省を促すことにつながるはず」と訴えた。

 また、90年代から日本で表れ始めたナショナリズムの兆候に危機意識を持ち、ナショナリズム批判の書「ナショナリズムの克服」(集英社新書)を作家の森巣博さんとの共著で出版した。姜教授は、在日として日本社会で疎外感を感じて育った経験を語ったうえで、「何者をも抑圧しない生き方を模索すること」を呼びかけた。

 同書は発売直後から評判を呼び、現在まで5刷6万部を発行している。社会問題を扱った書籍としては異例の人気だ。「現代日本を冷静に見つめ、向き合うための勇気をもらった」「ナショナリズムの正体について、在日の立場から解き明かしてあり参考になった」などの意見が寄せられている。

 「イラク戦争で国連の役割と可能性はまだ残されている」と話す李鍾元・立教大学法学部教授(写真:右)は、「日朝交渉 課題と展望」(岩波書店)を共著で出版。

 「米国の政策は、韓国や日本を含む北東アジア地域にとって、危機と機会の両面性を持っている。朝米関係の改善、そして平壌宣言で示された朝日間の安全保障協議や、事実上の6者協議を意味する北東アジア地域の信頼醸成協議への合意を進めるため、日本外交のビジョンが問われている。北東アジアの大きな転換点に日本のリーダーシップを期待したい」と述べた。

 韓国の元陸軍大将、白ヨプさんは、新著「朝鮮半島 対話の限界」(草思社)で、「現状維持は韓半島の悲劇を深めるだけであり、早急に南北の分断状況を解消しなければならず、そのためには関係各国とくに韓米日の緊密な連携が必要である」と強調している。

 青丘文化社は、和田春樹・東京大学名誉教授著「日本・韓国・北朝鮮」を出版した。

 編集を担当した李進煕さんは、「北朝鮮情勢が不安定ないまだからこそ、出版の必要がある」と発行意図を語る。

 和田さんが88年から15年間、韓国の『東亜日報』や『ハンギョレ新聞』などに寄稿してきた文章をまとめたもので、「東北アジアに生きる」とサブタイトルに記されたとおり、日本人の立場から韓日・朝日友好を願った本だ。

 和田さんは、「東北アジアに平和をもたらすため、日本人の立場で何が出来るかを考え続けてきた」と話す。