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2007/12/01

<韓国経済>韓国進出日本企業インタビュー・競争から共創へ 第11回                                           ~三井住友銀行ソウル支店長 会田 南氏~

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    あいだ・みなみ 1956年、神奈川県横浜市生まれ。上智大学英語学科卒。80年、住友銀行入行、栄町支店(名古屋)配属。97年、同行ミラノ支店副支店長。2002年、三井住友銀行国際法人営業部副部長。03年、カナダ三井住友銀行社長。07年4月、ソウル支店長就任。

 ――韓国に進出したいきさつは。

 80年代前半に円を国際通貨にしていこうという動きがあり、そのためには日本の銀行が海外マーケットで強くならなければいけないということで、一斉に海外に出ていった。

 合併前の旧住友銀行が一番早く韓国に進出し、1982年にそれまでの駐在員事務所をソウル支店に昇格、85年に三井銀行がソウル支店、88年に太陽神戸銀行がソウル支店を開設した。旧住友でいうと、ロンドン、ニューヨークなどの大きな拠点以外では、ソウル支店の開設が最も早い。

 この背景には、日本と韓国の経済的結びつきが強く、貿易や投資が活発で、今後も拡大していくだろうとの見通しがあり、韓国でのビジネスを拡大していこうということで進出した。87年に韓国で通貨危機があった際に、一部の日系銀行は撤退したが、当行は、韓国の主要企業や韓国に進出している日本企業に使っていただき、しっかりと韓国に根を下ろすことができた。

 ――韓国での業務内容は。

 個人の取引までは手が回らず、現在、法人を相手に資金の貸出、預かり、為替取引、スワップなどのデリバティブから、プロジェクトファイナンス、LBO(企業の買収)ファイナンス、船舶ファイナンスなどのプロダクト業務まで、すべてフルラインナップで手がけている。

 特に重要なウェートを占めているのが船舶金融で、当行は日本の銀行の中でトップ、韓国やフランスの銀行を含めても昨年度は第7位にランクインした。韓国は造船世界一を誇り、世界の受注マーケットの3分の1を占めており、韓国の造船界の発展とともに、当行の船舶ビジネスも成長してきた。韓国に育てていただいたといっていいだろう。

 当行は、船舶ビジネスでグローバル体制をとっており、ロンドン、シンガポールなどの船舶ファイナンス部隊と日々情報交換し、どこが何隻発注し、どこの造船所で建造しているかまで、世界の受注動向を常に把握している。


 ――韓国での成功事例を。
 
 韓国で25年間営業を続けてこられたことが何よりの成功だと思っている。事業の拡大とともに、ソウル支店のスタッフは日本人7人を含め70人に達し、韓国人社員の中には何人か20年選手もいる。外銀の中ではプレゼンスも非常に高い。

 最近の特筆すべき成果としては、今年の3月に韓国最大手の国民銀行と業務提携したことが挙げられよう。CMS(キャッシュマネージメントサービス)やクレジット業務で協力し、互いに相手国のビジネスを支援していくことになり、非常に心強い。国民銀行とは東京とソウルで勉強会をやったり、トップ同士が会って情報交換をやっており、いい関係ができている。

 ――支店長は今年赴任したばかりだが、韓国の印象は。また韓国市場をどう見ているか。

 今年4月に赴任したが、それまで韓国のことは、儒教の国で礼儀正しく、食事がおいしいとか、サッカーが盛んといった印象しかなかった。韓国に行ってみると、若い人が日本の音楽や映画に関心が高く、日本に非常に興味を持っている人が多いことに驚いた。

 また、若いころミラノに8年間駐在した経験があり、韓国とイタリアはとても似ていると感じる。両国とも情熱的な国民性でサッカーで盛り上がったり、原色を使うファッションなど共通点が多く、自分の肌に合うと思う。

 韓国市場については、国内だけでもこれだけ勢いがあって、バラエティーに富んだ国はないのではないか。国内での資金のニーズが堅調で、日本との取引も活発だし、ビジネスチャンスが実に豊富だ。

 韓国の特徴は、企業がどんどん海外に出ていって、大きなプロジェクトに投資している点で、韓国市場という場合には海外市場も考えないといけない。われわれにとっては潜在力のあるマーケットであり、韓国企業の資金ニーズを細かく追い求めていくことが、ビジネスチャンスにつながると思う。

 ――今後の事業戦略は。

 韓国企業は、中国、インド、ベトナム、中近東などに進出し、大型プロジェクトを進めており、これを支援していきたい。日本や韓国には制度金融があり、日本の国際協力銀行、韓国の輸出保険機構、韓国輸出入銀行を結びつける協調融資をアレンジしていきたいと思っている。

 今後の韓国ビジネスのキーワードは、グローバリゼーションとエナジー&リソースだ。韓国には資源がなく、海外での資源開発に力を注いでいる。モンゴルの鉱物資源やカナダのオイルサンドに投資しており、国内では太陽光発電プロジェクトが盛んだ。こういった資源・エネルギー分野で大きな商売ができると考えている。

 ――韓国と日本の関係をさらに発展させていくための提言を。

 日韓は、大企業だけでなく、中堅・中小企業まで密接な関係ができている。しかし、協力分野をみると、自動車、電機・電子部品、化学などに偏っており、分野を広げていくことが大切だ。韓国は大企業が強すぎて中小が育たないといわれるが、日本の部品メーカーが出ていって足りない部分を支えるとか、協力できる分野はまだまだたくさん残されている。韓国企業にも日本に投資してほしい。そうすれば、両国の関係はさらに緊密になり、発展していくと思う。