ここから本文です

2008/05/30

<韓国経済>韓米FTAの批准に暗雲

  • keizai_080530.jpg

    韓国では前政権から引き継いだ第17代国会で批准する予定だったが、牛肉問題が火種となり難航している

 韓米FTA(自由貿易協定)が漂流の危機を迎えている。政府と与党ハンナラ党は今月29日までの第17代国会会期中に韓米FTA批准案を処理し、米国議会に批准圧迫をかける方針だったが、野党の激しい抵抗にあい、先送りになる公算が強い。4月の韓米首脳会議で早期批准を約束したブッシュ政権も、議会への上程が進まず、難航しており、韓米FTAの批准に暗雲が漂っている。

 ブッシュ大統領は、任期中に韓米FTAを成立させたいとして、米議会に対して11月の大統領選挙前に批准するよう要請している。これに伴い、韓国側にも第18代国会が開会する6月、遅くとも7月までに批准するよう求めている。このため与党は、第18代国会で臨時国会を開き、FTAを処理する考えだ。6月に臨時国会が開かれれば、ハンナラ党は批准案を上程し、即時処理する。

 論理的には、過半数を占めるハンナラ党の賛成だけで批准案の処理が可能だ。しかし、与党が単独採決を強行すれば、その後の国会運営で野党の協力が得にくくなる。さらに牛肉の再交渉を求め、FTA批准を最大限遅らせようとする民主党など野党の戦術によって国会での処理が7、8月にずれ込む可能性も排除できない。

 与党は、批准案が8月になっても国会を通過しなければ、9月の定期国会で最終処理する方針だ。ただし、この時点で通過すれば、ブッシュ政権の任期が少なく、米議会への圧力は弱まるとみられる。

 米大統領選挙が実施される11月までに批准されなければ、FTAは実質的に次期政権の手に委ねられることになる。しかし、次期大統領の有力候補である民主党のオバマ上院議員が反対を表明しており、彼が大統領に当選すれば、批准は絶望的となる。米議会ではオバマ議員のほかにも、ナンシー・ペロシ下院議員など民主党指導部が韓米FTAに反対の立場をとっている。

 青瓦台(大統領府)は、韓国で批准案が通過すれば、ブッシュ政権の任期内に米議会を通過する確率は50%程度だが、批准できない場合には、米議会での通過率は20%に落ち込むと分析している。その場合、国内でのFTA反対論が一層高まり、批准案の国会通過は霧散する公算が高い。

 米議会は、大統領選挙のために9月初めから休会状態に陥り、実質的に機能しなくなるため、議会を通過するには、7月中旬までには上程されなければならない。このため政府と与党は、それまでに韓国での批准を完了したいとしているが、野党の反対が根強く、先行きは不透明だ。