ここから本文です

2009/05/01

<韓国経済>第1四半期企業実績・景気低迷のなか電子が善戦

  • 第1四半期企業実績・景気低迷のなか電子が善戦

    サムスン電子は携帯電話の販売増で営業実績が黒字に転換した

 世界的な景気低迷が続くなか、サムスン電子がV字型の回復傾向をみせるなど、韓国企業が善戦している。大手企業が相次いで発表した2009年の第1四半期(1~3月)決算は、情報技術(IT)や石油化学が好調で、実績が落ち込んでいた鉄鋼などにも収益改善の兆しが見られた。景気後退で市場規模は縮小したが、コスト削減と高付加価値製品の出荷を伸ばすことで、シェア拡大に力を注いでいる。

 サムスン電子が発表した第1四半期決算は、本社単体で売上高が前年同期比9%増の18兆5700億ウォンとなり、1500億ウォンの営業利益、6200億ウォンの純利益を記録した。昨年第4四半期(10~12月)の営業実績は9400億ウォンの赤字だったが、今回の決算で黒字に転換した。

 同社は黒字転換の理由として、携帯端末や薄型テレビなどで構成するデジタルメディア部門の善戦を挙げた。携帯電話など情報通信事業は9400億ウォンの営業利益を出し、デジタルメディア事業はテレビとプレミアム生活家電の販売好調により1500億ウォンの営業利益をそれぞれ達成した。

 季節的な要因と世界景気の後退で世界市場は縮小しているが、同社はコスト削減をしながら多機能で高価な製品の出荷を伸ばし、シェアを拡大している。ソニー・エリクソンが4期連続で赤字幅を拡大したり、ノキアも営業利益が前期比88・8%減と苦戦するなか、競合メーカーとの格差が鮮明になった。

 LG電子も携帯部門や家電部門の実績が回復したことで、4500億ウォンを超える営業利益を確保した。

 第1四半期の同社の売上は、前年同期比14・6%増の12兆8530億ウォン、営業利益は同24・7%減の4556億ウォンとなった。携帯電話と液晶テレビの収益性が改善したほか、全社を挙げてコスト削減に努めたことで、昨年第4四半期に赤字だった家電事業部が黒字転換に成功した。

 サムスン、LG両社とも、半導体とLCD部門が2四半期連続の営業赤字となったが、メモリー半導体とLCDの市場価格が上昇していることを考慮すると、第2四半期(4~6月)からは同部門の黒字転換も可能と予測している。

 石油化学科学産業も、中国特需などによる輸出の増加で好実績を出した。SKエナジーは石化製品の対中輸出が増え、営業利益が前年同期比61・8%増えた。ウォン安に伴う為替差損(3773億ウォン)が発生したにもかかわらず、当期純利益は昨年と同水準の2470億ウォンとなった。湖南石油化学も営業利益が前年同期の2倍強の1535億ウォンに達し、黒字転換に成功した。

 造船や鉄鋼も景気沈滞により予想を下回った。ポスコの売上高は前年同期比6・7%増えたが、営業利益は原料価格の高騰などで70%の減益となった。それでも、赤字転落が確実の新日本製鉄や、赤字幅を拡大させている鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルに比べれば善戦したといえる。

 このように韓国企業の実績が相対的に良好だったのは、為替の影響やコスト削減努力、海外マーケティングの強化などが主な要因と指摘されている。サムスン電子は販売管理費を1兆6000億ウォン削減し、LG電子も8000億ウォン減らした。ポスコのコスト削減規模は4153億ウォンと推定される。

 また、海外進出地域の消費者の趣向に合わせた製品を開発し、販売するなど競合他社との差別化を図るマーケティング戦略も一定の効果を生んだと分析されている。

 ただし、第2四半期(4~6月)以降も好調を持続できるかについては、必ずしも楽観視できないとの見方が多い。LG経済研究院のアナリストは、「今期の実績はコスト削減や為替の影響が大きく、景気回復と結論付けるには早い」と指摘した。