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2000/12/22

<総合>関西興銀,東京商銀破たん,在日社会に衝撃

 在日韓国人信用組合協会(韓信協)加盟組合の関西興銀と東京商銀の経営が破たん、金融管財人のもとで受け皿を探すことになった。法定期限は最大でも2年。だが実質上、預金1000万円までしか保証しないペイオフ解禁まで1年3カ月しかない。それまでに受け皿を探せなければ、本当に潰れるしかない。

 こうした事態を前にして、韓信協は横浜商銀主導で残る20組合で合併した後、普銀転換して関西興銀と東京商銀など破たん組合の事業を譲受することを決めた。一方の民団中央本部は、健全な在日銀行が早急に必要だとして、新たな受け皿構想の具体化に動き出した。

 韓信協は19日、大阪市内のホテルで緊急会議を開き、李煕健会長(関西興銀会長)の辞表を受理、新会長に李鍾大・横浜商銀会長を選出した。その上で、①横浜商銀が存続組合になってまだ経営破たんしていない全国20組合を全国合併し普銀転換する②普銀転換した後、関西興銀、東京商銀など破たん組合の受け皿として事業譲受する③合併基本協定の調印式は25日に都内のホテルで行うことを決めた。
 この会議には20組合のうち、東北4組合、栃木商銀、熊本商銀の6組合を除く14組合の理事長らが参加、「大変なことになった。生き残りのためには早期合併・銀行化しかない」との認識で一致した。韓信協事務局では25日の合併調印式に20組合全員の参加を期待しており、これまでなかなか進まなかった合併・統合交渉と違い、事態の急変が結束力を強める効果がありそうだ。

 だが、前途には難関が山積している。まず合併が実現したからといって早期に銀行転換が可能かという問題がある。あの有力組合が破たんしたのである。「うちは大丈夫か」という不安心理が働いて不思議でない。当面、各組合とも信用維持が重要だろう。それにしても合併組合の預金量は合計6000億円で、関西興銀の1兆円にはるかに及ばない。かりに銀行認可されたとしても、この資本力で図体のでかい関西興銀、東京商銀、さらには大阪商銀などその他破たん組合の事業譲受するには、大幅な縮小、リストラが避けられない。

 これらの課題をクリアしなければならないだけに、各組合は情報を公開、経営の透明性を一層図るなど一致協力して取り組めるシステムづくりが急がれそうだ。
 一方の民団中央本部は19日の緊急執行委員会でこの問題を集中審議した。また、在日韓国商工会議所でも対策を協議し、早期に銀行を設立して現在の危機状況を克服するしかないことで一致した。民団中央では特別委員会を設置、対策づくりにとりかかったが、「民団中央が主導して受け皿銀行を設立すればこれに全面的に協力する」と表明している韓日銀行設立委員会の動きも目が離せない。今後、韓信協の受け皿構想を中心にいろんな動きを起きそうだ。

 在日社会に大きな影
 韓信協加盟組合の東西の雄が倒れた。ともに債務超過に陥り、金融当局により破たん処理された。金融再生委員会によると、債務超過額は6月末時点で関西興銀510億円、東京商銀193億円にのぼり、「すでに大幅な債務超過にあり、自主再建は困難だ」というのが当局の判断だ。
 今後、いかに円滑に受け皿となる事業譲渡先を探すかが焦眉の課題になるが、在日経済社会に大きな影を落としており、厳しい批判の声も起こっている。

 特に関西は中小零細企業が多いだけに深刻だ。関西興銀の営業圏である神戸の長田ケミカルシューズ業界では、「中国製に押され、ただでさえ死活問題なのに、関西興銀が頼りの業者は倒産の危機にひんしている」と不安げだ。東大阪の在日経営者は、「中小、零細企業の債務者が地銀並みの担保査定をされたらどうなるのか。とても資金繰りができなくなり、倒産はおろか自殺するものまで出てくる」と声をあらげ、在日新銀行の早期設立を訴えた。

 大口の預金引き上げも始まっており、関西興銀では20日に200億円規模の日銀特融が行われた模様だ。今後、両組合とも預金量が減少、厳しい貸し出し、回収が避けれらない。

 東京商銀の中年出資者は、「この1、2年の間で東京商銀は新規に48億円ほどの出資金を集めた。金融当局の言う通りなら、経営破たんにあることを隠して集めたことになる。韓国から来た友人のニューカマー(新規滞在者)が同じように経営危機にあるにもかかわらず出資金を集めていた旧埼玉商銀に2000万円出資した。しかし、経営破たんしたため2000万円が戻ってこず泣き寝入りした。あの怒りの顔が忘れられない。経営陣の責任を徹底究明してほしい」と強調した。

 東京商銀と取引のある事業経営者は、「徹底的に膿を出すべきだ。この間、経営破たんした組合をみると、情実融資や無担保融資で当初から回収の見込みが薄いケースが多かった。経営者も無責任だがうまい汁を吸っている借り手もいる。管財人には、そうした焦げ付き債権は徹底して回収してほしいと望みたい」と強調した。

 いま、在日金融機関の存続のため銀行化が大きな流れになっている。在日識者の一人は、「銀行化を実現するにはベルトを締めなおさなければならない。そんなに簡単なものではない。既存の組合も一連の経営破たんを教訓に、密室審査とか情実融資をやめ、徹底的に経営透明化を徹底することが唯一の生き残り策だ」と指摘した。