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2006/12/01

<総合>韓国版・「失われた10年」警戒論台頭

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 サムスン電子や現代自動車など有力企業が世界市場を席巻、輸出もウォン高という悪条件の中でも2ケタの伸びを示し12月5日には初の年間輸出3000億㌦突破が予想されている。だが、韓国経済全般をみると、成長率が4年連続で潜在成長率を下回り、消費・設備投資とも沈滞したままだ。特に、未来の成長を担保する設備投資が回復する気配をみせていないのは気になる。また、外国人の対韓投資が鈍化する一方で、海外投資は急増し、産業の空洞化現象も懸念される。こうした中、日本の例を引き合いに「韓国版失われた10年」を警戒する声があがっている。不安な実態を追った。

 最近、「わが経済を食いちぎる低信頼の危機」と題する韓国紙社説は、次のようにを憂えた。

 「外国の言論は『不動産の狂風に慌てる韓国政府が、政策麻痺にぶつかった』と皮肉り、家計負債の急増、消費の沈滞などによる韓国版『失われた10年』の出現を警告している。経済官僚出身のウリ党・鄭徳亀議員は、『韓国経済が低成長、民生疲弊、権威の喪失、北の核危機の4大罠にはまった』とし、特に信頼の低さが成長動力を蝕んでいることを指摘した。それにもかかわらず、経済が好調であると話す政権の度胸が羨ましい」

 韓国の経済成長率は2003年以降、潜在成長率を下回っている。03年は3%台に陥った。今年も当初目標を下回り、5%を維持できるかどうかであり、第3四半期(7-9月)成長率は4・6%にとどまっている。来年はどうか。国内外の有力機関が相次いで4%台に墜落すると予想している。KDI(韓国開発研究院)は4%台前半、OECD(経済協力開発機構)は4・4%を予測する厳しさだ。1997年の通貨危機以前の2ケタ成長はいうまでもなく、通貨危機以降の7-8%台にも遙かに及ばない水準である。

 特に、設備投資が不振だ。GDP(国内総生産)に対する設備投資比率は93-97年には平均13・8%に達していたが、98-02年には11・2%に下がり、最近では1ケタに陥った。前年比の増加率をみても、01年にマイナスに陥ったのをはじめ、低水準が続き、昨年も5・1%増にとどまった。

 一方で外国人の対韓直接投資をみると、04年の127億㌦をピークに下降し始め、今年は1-9月実績で75億2000万㌦(申告基準)にとどまっている。これに比べ、競争相手国の中国は95年の375億㌦から昨年には603億㌦に急増。香港(359億㌦)、シンガポール(201億㌦)と比べても韓国への外国人投資は明らかに少ない。

 財界関係者は、「インフラが競争国に比べ劣る上に、規制はさらに複雑だ。反外資情緒まで強いとなれば、だれでも投資する理由がなくなる」と果敢な規制撤廃などを求めた。

 一方、韓国人の海外投資は絶好調で、9月末現在で125億4000万㌦を記録した。これまで、海外投資より外国人投資が圧倒的に多かったが、今年は初めて逆転することになった。韓国人の旺盛な海外進出はグローバル化時代に乗ったものだが、このままでは「産業空洞化は避けられない」という心配の声が出るのも当然だ。

 なぜ成長率が何年にもわたって低水準に陥っているのか。また、設備投資が回復しないのはなぜなのか。様々な原因が指摘されているが、リスク管理に重点を置いた企業運営、最近多発・激化している労使紛争にも原因がある。特に、未来への不確実性に対する不安が大きい。原因究明を徹底し、対策を講じるべきだろう。