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2015/02/13

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第25回 急浮上するユーラシア新興市場                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院経営情報学研究科(MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所、三井グループ韓国グローバル経営戦略研究委員会委員などを経て現職。

  • 韓国企業と日本企業 第25回 急浮上するユーラシア新興市場

◆複眼的戦略でビジネスモデルの追求を◆

 北東アジア経済圏では、環渤海経済圏、環日本海経済圏、大メコン経済圏、新極東経済圏、ヒマラヤ経済圏、新シルクロード経済圏、モンゴル経済圏の7つの経済圏が、蠢き始めている(図表参照)。第23回(2014年12月号)に引き続き、その実態を分析する。ヒマラヤ経済圏(中国チベット自治区・ネパール・インド北部、人口6000万人)は、インド・ネパール・ブータン・ミャンマー4カ国と国境を接するチベットが、06年の青蔵鉄道(中国西部青海省西寧とチベット首府ラサを結ぶ高原鉄道)の開通に加え、中印間の陸上貿易ルートの要衝であるナトゥラ峠の44年ぶりの再開やチベットとネパールを結ぶ「中尼道路」の整備を機に、中国国内はもとより南アジアとの国境貿易と観光で脚光を浴びている。中国は、チベットの人権問題などを抱えつつも、経済面ではチベットを「西部大開発・国家プロジェクト」に組み込み、大規模な投資やインフラ建設などの強化に注力している。国境を隣接するインドやネパールなど南アジアとの経済交流や貿易拡大を推進する上で、陸上貿易ルートの玄関口として期待を寄せている。

 新シルクロード経済圏(中国新疆ウイグル自治区・中央アジア、人口8000万人)は、アジア・ユーラシアダイナミズムのストライクゾーンであり、東西文明が交差するシルクロードとして復活するが如く、経済マグマが蠢き始めている。12年8月に新疆ウイグルの自治区首府であるウルムチ市とシルクロードの要所であるトルファン市を現地視察したが、中国とは思えない程のエキゾチックな街並みや、目覚ましい経済発展ぶりに驚かされた。また、世界最大と言われている新疆国際大バザール(建築面積10万平方㍍)などでは、中国新疆地域と中央アジア諸国の隣接する地域との間で活発な商取引が行われているが、これはただのショッピングや個人商店レベルではない。国家経済にも大きな影響を及ぼす規模でビジネスが展開されている。中国の西北に位置する人口2200万人の新疆ウイグル自治区は、日本の4・4倍の面積を有し、チベットに次いで中国で2番目に大きな行政区域である。経済は、豊富な地下資源を強みにGDPは年率15%を超える高成長を続けている。石炭は、中国全体の埋蔵量の40%、天然ガスは同33%、石油は同28%を占めている。また、シェールガス埋蔵は、新疆ウイグルに最も集中しており、エネルギー地政学的にもこの地域から中央アジアにかけての重要性が新たな意味を持ち始めている。ウルムチ市の人口は、約310万人で、ここ10年で2倍以上に増えている。1人当たりGDPが5万元(63万円)で、ハルビンや西安よりも高い水準となっている。また、ウルムチ市では、漢民族が7割、残り3割がウイグルを含む少数民族が占めている。新疆ウイグルは、トルファンなどがシルクロードで有名な観光都市でもある。国内外からの観光客は、年間2500万人(うち外国人132万人)に上り、日本の外国人観光客1300万人を大きく上回っている。訪問した時もウイグル騒乱(死者800名)の3周年を迎えた時期で厳重な監視体制が取られていたものの、空港は観光客で賑わっていた。


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