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2000/09/15

<在日社会>在日高齢者8万7000人

 15日は敬老の日。在日韓国人社会でも、この日を前後して在日韓国民団などが催しを行っている。在日社会も日本社会と並行して高齢化が進み、将来は介護の問題などが深刻化する見込みだ。また在日韓国人の平均寿命は、食生活の影響などで日本人より短いという。

在日も高齢化社会へ

 99年度末の法務省入国管理局の統計によると、99年末現在の在日韓国・朝鮮人の65歳以上の高齢者は、男4万665人、女4万6662人の総計8万7327人。在日社会63万6548人の13・7%を占める数字だ。
 ニューカマーと呼ばれる新規入国の韓国人は10万人と言われており、それを除くと在日高齢者の比率は16・3%になる。これは日本社会とほぼ同じ数字で高齢化率は世界的にも上位になる数字だ。在日社会の高齢化が進んでいることを裏付ける。

 在日で100歳以上の高齢者は、人口比率でいえば60人ほどと見られるが、法務省入国管理局では「85歳以上という分類なので、100歳以上の人数はわからない」としている。ちなみに日本の高齢者比率は、全人口の約17%、100歳以上の高齢者は1万3036人になる。

 姜健栄・在日韓国人医師会関西支部会長は、「在日韓国人の場合、キムチなど塩辛いものを多く食べる生活のために肝臓ガン・胃ガン・脳卒中などの病気が日本人より多い。さらに日本社会での精神苦・経済苦が多かった関係で、平均寿命が日本人より短い。長生きのためには注意が必要だ」と話す。

 また高齢化に伴い、介護も見逃せない問題となっている。母親の介護を長年行っている在日2世で歌手の星聖姫さんは、「介護は本当に大変な問題だ。私もヘルパーを頼むが、日本の方だとどうしても在日1世の心のひだがわからない部分がある。在日のヘルパーもいるといいのだが」と話す。

 現在、在日社会でも介護保険についての勉強会を行ったり、在日のヘルパーを育成するなどの動きが起きている。

寄稿「在日ホームヘルパーの育成を」
 姜健栄(在日韓国人医師会関西支部会長)

 今年4月の介護保険制度導入から、5カ月半が経った。利用者は予想していたほどに伸びていない。患者への一部負担が大きく影響したのである。
 4月以降8月初めまでの間に、介護保険事業を廃止または休止した業者数は、延べ830件にのぼる(朝日新聞)。コムスンなどの大手は伸び悩み、リストラを余儀なくされている。
 このような中で、在日の介護支援活動はどうなっているのであろうか。大阪府下を見ると、在日関係介護支援センターは、わかっているだけで「ハートフル東大阪」「リンクス介護の森」など5カ所だ。
 「ハートフル東大阪」の場合、同胞密集地の東大阪と生野区に拠点を有し、ケアマネージャー1人、常勤ヘルパー4人、登録ヘルパー25人からなる。生野区の在日高齢者から介護の相談が来ると、直ちにハートフルへ連絡される仕組みとなり、目下この地域で活躍中である。
 その責任者によると「在日コリアンの家庭は、介護保険制度に対する知識、理解が日本人より少なく、解ってもらうのが難しかった。特に1世の高齢者は、戦後いろいろな苦労をしてきたせいか、日本社会への不信が強く、また人の世話になりたくないという方が多いので大変」と話している。

 このような状況に対応するため、韓国婦人会大阪地方本部(余玉善会長)では、今年5月から第1回ホームヘルパー養成講座を開き、30人の2級ヘルパーを世に送りだした。他地域でも、在日のホームヘルパーを養成しようという動きが出ている。本事業は本来、在日医師団にも責務があるが、各地でのこのような動きには敬意を表したい。

 介護保険はまだスタートの混乱期である。「介護報酬の増額」「システムの簡素化」などの改善のほかに、「サービスの質」に直接かかわる「人の育成」が特に大事である。高齢化が進む在日社会に対応するため、今後も人材育成を進めてほしい。