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2000/08/25

<在日社会>在日初の議員秘書誕生

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 6月の衆議院議員選挙で民主党の公募候補として栃木一区小選挙区から出馬し、見事に初当選を果たした水島広子議員(32)=写真左=が、このほど議員秘書を公募。約100人の応募者から選ばれた3人の中に、在日2世の柳英美さん(32)=写真右=が含まれた。私設秘書ではあるが、在日韓国人が議員秘書となるのは初めてということで、注目を浴びている。

 水島広子議員は、民主党公募というこれまで前例のない形で選挙に出て当選を果たしたが、秘書の選出もやはり前例のない公募という形式をとって、周囲を驚かせた。議員秘書は地縁関係で選ぶことが多いからである。

 当選直後に秘書公募が行われ、地元紙などでも紹介されたが、それを見て応募したのが柳さんだ。試験は小論文と面接。論文のテーマは「なぜ水島広子の秘書に応募するか」で、「もし民主党が軍国主義政党になったら、すぐに離党するという水島議員の発言を支持する」と書いた点が評価(水島議員)された。

 柳さんは「公設秘書は国籍の問題でだめかと思ったが、修行のつもりで論文を書いた。政治には以前から関心があった」と述べる。総選挙直前に、日本の朝日新聞に「自たちは選挙に関心があっても、投票権がないので投票に行けない。選挙権のある人は必ず投票に行って、自分の意思を政治の場に伝えて欲しい」との投書も行っていた。

 書類選考を通過した21人の中に選ばれた後、面接審査で柳さんら3人の採用が決定した。7月17日から勤務が始まり、3カ月間の研修を経て正式採用になる。水島議員は「(選ぶとき)特に在日ということは意識しなかった。成績順に選んだら柳さんが残った」と説明する。公設秘書は2人まで費用が支給されるが、韓国籍の公設秘書は認められないため、柳さんは私設秘書扱いで勤務している。現在は宇都宮の事務所で、水島議員のタイムスケジュールを主に管理している。
 「いろいろな人と会えるのが面白い。まだ慣れなくて、ダブルブッキング(二重予約)をして水島さんに迷惑をかけたこともある。勉強の毎日」と話す。

 水島議員は「ミスはまだあるが、自分を見失わずにがんばって働いている。持ち前の明るさでカバーしている」と評価する。同年代ということと、水島さんの気さくな人柄もあってか、「柳さん」「水島さん」と呼び合う。普通の議員事務所にはないアットホームな雰囲気だ。

 柳さんは、東京生まれの在日2世。東京女子大学史学科卒業後、9年間パルコに勤務。その後結婚して、栃木に移った。
 「議員秘書には将来政治家を目指す人も多いらしく、私も将来は政治家志望ですかと聞かれて、選挙権もないと答えると驚く人が多い。在日に参政権がないのはおかしい。
共存ということを考えると、米国のように日系米国人とか韓国系米国人が存在する形が理想的と思う」としたうえで、「在日の人も、日本の選挙や地方自治にもっと興味をもってほしい。私たちの住んでいる土地なのだから」と話す。

水島議員コメント
「価値観共有できる人」

 柳さんは論文や人柄を見て、人権・平和を大切にする人で、私と価値観が共有できると感じた。在日の女性を秘書に雇用したということで、外国人の人権運動をしている人たちからは、外国人問題のアピールになるといわれた。韓国の女性政治家と将来交流したいと考えているが、そういう時の橋渡しとしてもよかったと思う。

 学生時代の友人に在日の女性がおり、選挙権がない話などは聞いていた。定住外国人の地方参政権はもちろん、将来は国政選挙権も検討されるべきだと思う。
 私は子どもたちに明るい未来を残すために立候補したので、在日の民族教育の問題も勉強して、将来取り組みたいと思う。
 在日の人が存在をアピールしてくれることは、多様な社会を作るために必要なこと。どんどん発言してほしい。