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2001/09/21

<在日社会>東京商銀 金聖中・前理事長を横領で逮捕

 在日韓国系の信用組合・東京商銀(東京都新宿区)の金聖中・前理事長(52)が17日、組合資金から約8650万円を着服した業務上横領容疑で東京地検特捜部に逮捕され、自宅などの家宅捜索も行われた。金容疑者への取り調べは現在も続いているが、在日韓国人のための信用組合を私物化したことに、在日社会では激しい怒りの声が起きている。

 これまでに判明したところでは金容疑者は、東日本地域の在日韓国系信組を結ぶオンラインシステムの委託業務契約により各信組から入金された印刷用紙代金から計4067万円、栃木商銀から出向職員の給与として振り込まれた中から計2030万円、東京商銀の関連会社「東京サプライ」と「東信プロパティー」を使って行われた「う回融資」の利ざやから2556万円など約8650万円を着服して、個人資産や食事、ゴルフ代などの遊興費に使った疑いだ。

 金容疑者は着服の発覚を防ぐため、側近の幹部に命じて自分の仮名預金口座に入金させ、自由に引き出して使っていた。仮名口座は少なくとも3口座あり、そのうち2口座は先代の許ピルソ・理事長(故人)から引き継いだものと見られている。

 戦後、在日韓国人社会の経済活動支援のための同胞金融機関として設立された東京商銀は、許理事長が27年間トップの座にあった。娘婿の金容疑者は94年6月に理事長に就任した。

 東京商銀の経営がつまづいたのは91年、アラブ系銀行「BCCI」に資金運用の目的で預けていた125億円が、同銀行の経営破たんで引き出し不能となったことだ。

 結局、半分以上回収できたが、その後も大口融資の回収不能が相次ぎ、乱脈経営が取りざたされるようになった。大口融資は理事や融資部長による「融資審査委員会」で行う決まりにもかかわらず、金容疑者は個人判断で融資を決定していた。

 99年3月には経営破たんした埼玉商銀の事業を譲り受け、約360億円の公的資金導入も行われたが、その内実は不良債権だらけだった。同年から不良債権を隠す為に、不良債権を引き取らせる「飛ばし」をゴルフ場経営を主とする企業グループに行っていた。

 この企業グループには、担保価値が不十分なことを知りながら総額約100億円の融資を実行しており、飛ばしの見返りの融資ではないかと見て、背任容疑で捜査が進められている。

 在日社会では「民族金融機関をだめにした責任を取ってほしい」「乱脈融資の実態を明らかにすべきだ」「出資金が返ってこない人が大勢いるのに、隠し資産とは絶対に許せない。着服した金は全額返済し、関係者の処罰を求める」などの声があがっており、一日も早い実態解明が待たれる。

 金容疑者は東京商銀の経営破たん直前の2000年12月11日に、自宅の土地・建物に極度額3億円の根抵当権を設定していたことがわかった。

 台東区の会社を登記上の債権者としてつけられたものだが、ずさんな融資の責任を問われて元理事から訴訟を起こされていた時期であり、敗訴による差し押さえを逃れるための「資産隠し」の疑いがもたれている。

 根抵当権は今年3月に解除、4月に東京地裁の仮差し押さえを受けた。5月に裁判で5億円の支払いを命じる判決が出たのを受けて、6月に競売開始が決まっている。

 金容疑者は、ほかにも仮名口座を持っていたと見られており、隠し資産がどのくらいあるのかはまだ判明していない。

 特捜部では隠し資産の全容についても、引き続き調べを続けている。