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2001/06/15

<在日社会>南北頂上会談1年 在日社会も本格的雪解け

 2000年6月、分断以後初めて行われた南北頂上会談から1年が経った。経済、社会など多分野での交流促進を合意し、在日社会でも統一への期待が高まった。この1年を在日の人々はどう見たか、在日の作家、学者などに話を聞いた。

文化で統一に貢献
作家 梁石日氏

 当初期待していたよりも、交流は遅れているようだ。米国がブッシュ政権になり、北朝鮮や中国に強硬路線を取っていることが影響しているようだ。しかし、現在の世界情勢を見れば、米国もいつまでも強硬路線は進められないと思うので、交流進展を期待したい。

 交流を進めるのにもっとも大切なことは、北の経済がどこまで回復するかだろう。経済基盤が安定しないと、韓国の負担が大きくて統一は難しくなるからだ。

 在日の関わりだが、在日は政治的な力は持っていない。民団、総連という両組織も、政治的な影響力はないに等しい。政治でなく文化でどう貢献するかを、在日個々人が考えることが大切だ。

 小説、映画、スポーツなどを通して在日の存在や文化、考え方を韓国、北朝鮮、日本社会に伝えていけば、政治にも影響を及ぼしていくはずだ。

商銀と朝銀を1つに
大阪市立大学 教授 朴一氏

 この1年、紆余曲折を経ながらも南北交流が進んできたことは確かだ。在日社会でも、民団、総連の枠を越えた交流が見られるようになってきた。

 日朝国交正常化の促進を日本政府に訴える、歴史を歪曲した教科書への対処、2002年W杯への協力なども、民団と総連が合同で早急に取り組んでもらいたい。

 在日社会はいま、商銀、朝銀の経営破たんという経済的に厳しい局面を迎えている。在日の信用組合を早急に再建する必要がある。いま韓国政府の支援を受けて銀行化構想が進められているが、将来的には商銀、朝銀を一つにして経営基盤のしっかりした金融機関を作ることが重要だ。

 もう一つ大切なことは民族教育だ。民団系、総連系問わず、民族学校は経営が苦しい。しっかりした金融機関が、民族学校の経営を支えられるようにしないといけない。民団系、総連系の民族学校の統合も課題だろう。

共同行動の定期化を
甲南大学 教授 高龍秀氏

 3月に大阪ドームで民団、総連、大阪府民が参加した3万人規模の「ハナマトゥリ」が開かれて私も参加したが、大阪府知事などの来ひん、そして民団、総連から多数参加し意味のある催しだった。ああいう行事が定期的に、しかも全国各地で行えればすばらしい。

 民団と総連が共同事業を行う中で、それぞれの組織の長所を生かしていけば、在日コリアン全体の認知度を高めるきっかけになるし、若い在日にもよい影響を与えると思う。ぜひ進めてもらいたい。

 南北関係についていえば、軍事的緊張緩和が焦眉の課題だ。今年中に2回目の首脳会談を実現させ、双方の兵力削減で合意してもらいたい。そうすれば北への不信感が取り除かれて米国と北との関係も好転するし、日本も動きやすくなって、日朝国交正常化の糸口も見えるからだ。

南北にレール寄付へ
三千里鉄道 代表 都相太氏

 昨年の南北会談で合意された京義線の鉄道連結を支援するため、南北両政府にそれぞれ2㌔ずつの鉄道敷設代をカンパする運動に、今年3月から取り組んでいる。

 総額3000万円の目標だが、現在まで800人が協力、1000万円近くが集まった。

 目標額の半分となる1500万円が集まったら、取りあえず両政府に届けたいと思い、現在準備を進めている。鉄道建設は現在遅れているが、在日の声を届けることで雰囲気高揚に役立てばとの考えからだ。

 17日には愛知で南北会談1周年を記念した集まりを持つ。南北分断をテーマにした映画「JSA」を上映するほか、南北会談に同行した韓国の国会議員を招いて話を聞く予定だ。
 また議員たちに在日の統一への思いも伝えるつもりだ。ぜひ参加してもらいたい。

北でもW杯開催を
フリーライター 姜誠氏

 金大統領の任期中にどれだけ北との交流を促進出来るかが、今後の南北関係にとって大切なポイントになる。金正日総書記の訪韓が、年内に実現することを期待したい。

 サッカーのワールドカップ(W杯)まで1年を切ったが、南北が共同でW杯に対処することは出来ないだろうか。世界が注目するイベントに北も協力すれば、北を見る世界の眼は大きく変わる。

 在日社会でもW杯開催に協力したいとの声が高まっているし、W杯開催に協力する中で、多民族共生を願う在日の存在を示したいとの個人的思いがあるが、南北が共同行動を取ってくれれば、在日ももっと動きやすくなる。